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ここは、カフェ・ライムライト。
街角のビルの地下にひっそりとある、クラシックで落ち着いた雰囲気のカフェ。
カウンター席のほかにテーブル席がいくつもあり、広すぎず狭すぎないくつろいだ空間だ。
お店のインテリアはどれも品が良いアンティークで、取っておきの大人の隠れ家という感じ。
ささやかに流れるBGMはレコードのジャズ。店内には挽きたてのコーヒーの良い香りが漂う、とても素敵なお店だ。
そして私。私は、月島風優子。
こないだ二十六歳を迎えたばかり。つい先日までデザイン事務所に務めていたのだが、わけあって全く業種の違うこのカフェで働くことになった。
取り立てて変わったところがない、ありふれた人間だと思う。
直近に起こった衝撃的なできごと以外は。
私は今までにお客としてお店を利用したことはあっても、飲食業には縁のない生活を送ってきた。だからこの仕事には戸惑うことも慣れないことも山ほどある。
それでもこの歳になってから全く業種の違うこの仕事をやっていく気になったのには、理由がある。
今の私にはとにかくなんでもやってみるしかないから、という後ろ向きな理由が二割。
残り八割は、もっとずっと前向きだ。
この出会いをありがたく思い、厚意に応えたい。新しい自分を見つけたい、そんな気持ちが強くあるからだった。
どちらにしても、少しばかり思い詰めざるを得ない事情が、私にはあるのだった。
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