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「それで?」
次の休みにはまた太一が私の家に遊びに来ていた。
「ママ達、一緒に住むらしいよ」
私は歌うようにそう言った。こんなに心が浮き立っているのはつぶりだろう。そんな私を太一は珍しそうに見ていた。
「良かったじゃん。両親、これで揃って」
「うん」
「恭子さ、母親の話したの俺しかいないって言ってたけど、なんで俺に話そうと思ったの」
それは唐突な質問だった。今まで、踏み込んだことは何一つとして言ってこなかった太一。
「なんで……太一には、知ってほしかったんだと思う」
「うん、俺も知りたかったよ。恭子のこと、色々」
「私も、太一のこと知りたいって思った」
私がそう言うと、太一が珍しく顔を赤くしたのが分かった。いつも余裕そうな顔を崩さなかった太一。
私が小首を傾げると、太一がおずおずと顔を上げる。
「知りたいってさ、好きだって言ってるのと同じだと思うんだよね」
「え……あっ」
私は自分の口を両手で押さえた。今度はこっちが赤くなる番だった。これは、もしかしたら初恋なのかもしれない、そう思った。そこで言わないのはずるいと思って、私は勇気を振り絞ることにした。
「うん。私、太一のことちゃんと好きみたい」
「ふはっ」
太一が嬉しそうに噴き出して、それでもう答えは分かっていた。私たちは馬が合うから付き合っていたけれど、お互い好きだと明言はしてこなかったのだ。これからやっと始まるのだ。私たちの人生が。二人の未来が。
そのとき不意に、母が出て行った日に父が作ってくれたのはハンバーグだったことを思い出したのだった。
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