19.敏腕リーマンは大型ワンコを連れ帰る*

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「……は?誘ってます?」 「え、なにが?行こう、映画はじまっちゃう」 「も〜〜〜っ。映画始まって暗くなったらキスします今決めました」 「はっ?だめだめ、なに言ってるの『待て』しなさい」 「わんっ(無理)」  連れ帰ってから、この子はずっと浮かれ気味だ。ただそれは自分も同じだから文句は言えない。  家に持ち込まれたおしゃれなソファは、柊と夕里の定位置。いまだに正しい座り方はわからないが、彼が背もたれになってくれるのが普通になった。    東京に帰ったあと。フリーターに戻って、マッサージに関連する資格を取るため、通信で学校に通うと夕里は言い出した。それはもともと頭のどこかにあって、柊と付き合うことになったタイミングで決意したようだ。    やりたいことは応援したい。資格を取るのも賛成だ。しかし生活費と学費を稼ぎながらの勉強は大変だろう。  いまだけと言っても、なかなか会えない日々になるのは想像に容易い。それはちょっと……離れていたからこそ不安だ。  だから柊は提案した。養ってやるから家に来いと――  彼は悩んだようだが結局うちに来て、毎日一生懸命勉強している。宿代だと掃除洗濯炊事までやってくれて、家事代行サービスは解約した。外食や無駄に高い栄養食品を買わなくて良くなったおかげで、結果的にかなり支出は減っている。    最初は『恋人に住み込みでお世話させるなんて、申し訳ないししなくていい』と、そう言ったけれど。夕里は『やりたいからやっている』の一点張りで……最終的に柊が折れた。  
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