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カスミはそう言うが、俺はジワジワと感じ取っていた。
自分が少しずつ…だが確実に宝石に蝕まれてる事を。
多分…俺はもう助からねー。
だから最期に…。
「カスミ」
「センヤく…っ?!」
俺は隣のカスミの身体をローブ越しに抱き締めるとその小せー唇にキスを落とした。
「…ん…」
カスミが身体の力を抜いたのが伝わってきた。
俺達はそのまま長い間唇を重ね合わせていた。
その時、月が雲に隠れて空に散らばった無数の星達が流星となって降ってきた。
俺とカスミには見えなかったが、それは皮肉な程綺麗で美しく夜空を飾った。
まるで白い宝石の欠片の様に。
やがて俺達が唇を離すと星々は何事も無かったかの様に月の影に光を弱くした。
「私…先に部屋に戻っているわね」
カスミは悲しい笑顔を浮かべると、名残り惜しそうにゆっくりと屋上を去っていく。
これでもう思い残す事はねー。
心が満たされた俺はこの時点で宝石から与えられた能力が消失したのに気付いてなかった。
だから部屋に戻ったカスミがどんな決意をしてそれをワタルとリョウに話したのかも解らなかったのである。
翌日。
4人でいられる時間を惜しむように、街を後にした俺達は月の神殿を目指してひたすら歩いて行く事にした。
悠長な事は言ってらんねーが、全員、心を整理する時間も必要だった。
途中、何度か休憩を挟んで又月の神殿を目指し歩き出す。
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