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店員は緊張の糸が切れたのか、その場にヘナヘナとしゃがみ込む。
「大丈夫か?あんた」
俺は店員に手を差し伸べた。
「だ、大丈夫…」
『こんな目に遭うの久しぶり…。黒い宝石を手放したのに…』
俺は手を握った店員の声に耳を疑った。
「黒い宝石、だと…?」
「えっ?」
店員は心底不思議そうな顔をして立ち上がった。
しまった!
又心の声が聞こえてきて反応しちまったらしい。
「い、いや、あんたが今口にしたから…俺はトレジャーハンターでね、宝石の類には目が無いんだよ」
咄嗟に口から出た出任せだったが、店員は意外にも暗い表情になる。
「あんなの宝石なんて綺麗な物じゃないわ!貴方みたいな冒険者の男性客から代金の代わりに貰ったんだけど…」
そこまで言うと店員の目から驚いた事に涙が流れ落ちた。
「その頃から面白い様に売れ行きが伸びて…でも今みたいな強盗の類も増えて…両親は殺されてしまったの…!」
…何か聞いちゃいけねー事を聞いちまった気がする。
行きずりの冒険者にだからこそ吐き出してるのかもしれねーが…。
「だから、私は他の冒険者に黒い宝石を半ば強引に手渡した…。それから売り上げは落ちたけど、強盗は一切来なくなったのに…っ」
本当に黒い宝石のせいなんだろうか…?
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