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呆然としてると怯えた表情で俺を見てるリョウと目が合った。
「タモツが怖いよう!」
リョウはそう叫ぶと一目散に宿屋に向かって逃げて行った。
「リョウ…」
俺の大切な仲間が失われそうになってる。
俺は涙が出そうになるのをグッと堪えた。
「リョウくんは私が追い掛けるわ」
カスミもそう言うとリョウの後を追った。
俺も追おうとして思い留まる。
今、俺が追い掛けてもリョウを余計にビビらせるだけだ。
俺は野郎の懐から金を奪い返すと震えながらコッチを見てる爺さんの手に握らせた。
「爺さん、怪我の手当てが出来なくて悪い。早く家に帰った方が良い」
「あ、ありがとう…。お前さん、さっきまでとは別人の様じゃて」
俺はちと安心してくれた爺さんの身体をそっと起こすと後ろ姿が見えなくなるまで見送った。
「どういうつもりだ?」
別室でカスミと、事情を聞いたらしいワタルがリョウと話してる間、俺は宝石に向かって詰問した。
『言ったでしょう?タモツ・センヤ。私と貴方は一心同体だと。私は貴方の望みを叶えたのです。責められる覚えは有りませんが』
確かに俺はあの時カスミを助けたいと思った。
だがあそこまでしなくても助けられた筈だ。
「あんたの存在は悲劇を生むだけだ」
『気付いてない様ですね、タモツ・センヤ。貴方の中には暴力を振いたい欲求があるのですよ』
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