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もう夜も遅かったが、テーブルに俺とワタル、対面にカスミとリョウが座っていた。
「そんな…っ!嘘、でしょ…?」
俺達3人のそれぞれの話を聞いたカスミは顔面蒼白になっている。
やっぱ話すんじゃなかったか?
そんな想いが心を掠めた時、カスミがガタッ!と立ち上がると部屋を飛び出した。
「待て!カスミ!」
「カスミちゃん!」
「リョウ神父。ここはセンヤくんに任せた方が良いでしょう」
俺と共に追いかけようとしたリョウはワタルに止められた。
部屋から出ると、宿屋の屋上からカスミの声が聞こえてきた。
『センヤくんの命が黒い宝石を封印する為の代償だなんて…代われる者なら私が代わりたい…!』
カスミ…。
俺は宿屋の中に在る階段を昇って行った。
屋上に出ると月明かりに照らされた一角でカスミが星空を眺めているのが見えた。
「カスミ」
近くまで行って声を掛けるとカスミは泣いてたのか、涙を指で拭いて俺に向き直った。
「よくここが解ったわね」
「言っとくがストーカーじゃねーからな」
「ひょっとして声が聞こえたの?」
「ああ」
俺達は暫く無言で月と星空を眺めた。
やがて口を開いたのは俺の方だった。
「カスミ…時々は俺の事を想い出してくれると嬉しい」
「悲しい事言わないで…」
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