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壊れた壁の隙間の近くを通り掛かった時だった。俺は隙間から光を放つ黒い宝石を見つけた。
その宝石は周囲の光を吸い込むようにしてキラキラと輝いてて、カスミが持つに相応しい極上の美しさを放っていた。
こういうのを渡したらカスミ喜ぶだろうな。
惹きつけられた様に、俺はその宝石に手を伸ばした。
「スゲーな…」
宝石は俺の手の上で強く光輝いている。
俺はその光を隠すように宝石をそっと懐にしまうと遺跡を後にした。
異変を感じ取ったのは、夜も更けた城下町に入ってからだった。
もう遅いからカスミも寝ているだろう。
宝石をプレゼントしに屋敷に向かうのは、明日にすることにして、俺はワタルとリョウの待つ宿屋へと向かっていた。
『金が…金がもっと欲しい…』
『ヤりてー…女なら誰でも良い…』
『いつかは出世して、城に召し抱えられるようになってやる!』
通りすがりの通行人の声が次々に聞こえてくる。
いや、それだけなら、何て事はねーんだが、その声は頭の中から響いてくる様で…。
俺はちらっと通行人を見たが、皆、足早に歩き去っていく。
その時。
『あれは…タモツ?』
悪徳貴族ゴサク・サトウの声まで聞こえてきた。
ゴサクは以前から俺の体を狙っている事は知っている。
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