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身の危険を感じた俺は宿屋に向かって走り出した。
『タモツ?!気付かれたのか?まさかな…。後を追おう』
聞こえる様に言っておきながら、何言ってる!
貴族如きに追い付かれる様な俺じゃねーぜ。
俺は人混みに紛れる様に、素早く人波を縫う様に走り続けた。
『タモツ…どこへ行った?!』
宿屋に入ったところで、ゴサクが悔しそうにそう叫ぶ声を最後に奴の声は聞こえなくなった。
そう…ゴサクの声は。
部屋に近付いて行く内に何故かワタルの声が聞こえてきた。
『あの古代遺跡には、不思議な宝石があるみたいですね…』
リョウにでも話して聞かせているのかと思ったがリョウの声は聞こえてこねー。
そもそもワタルの声はそんなにデカくねーし、夜も遅いから大声を出す様な常識知らずの奴じゃねえ。
俺は不思議に思いながら、部屋のドアを開けた。
「よお、ワタル。遅くまでご苦労なこったな」
「そう言うセンヤくんこそ…随分とあれから探索されてたみたいですね。リョウ神父はもう眠っています」
隣の部屋は寝室になっている。
俺も良い加減今日は疲れた。
「まあな。だが、お陰で良いお宝が見つかった」
「良い宝…ですか?」
「ああ。明日、カスミにプレゼントするんだ。だから、明日の遺跡の探索は、俺は抜けるぜ」
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