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アフリカに再び
それでもこんな高級な食事を楽しまない手はない。肉を食べ、パンで皿のソースや肉汁もきれいにして、チョコレートケーキとコーヒーのデザートが来た頃に、そろそろ本題に入るんだなという気配があった。
アフリカに行って言葉もロクに分からないところで、伊達に数年も暮らしてきたわけじゃない。気配や雰囲気、大事。
「それでは、ですね。あなたにアフリカに行ってもらいたいというのは、実はこれなんですよ。」
そういって見せられたのはハレーションを起こしたような真っ白の地面。空は青空。
「なんですか?白いのは雪?あ、ウユニ塩湖とか?」
首を振る「しめ」さん。
「これが同じ場所の1カ月前の写真です。」
それは、ありきたりの茶色い大地で多分アフリカと思われる景色だった。
「これはどうやら植物らしいんですよ。それも新種の。」
そういわれて、俺ははっとした。自分がアフリカでやっていたのは夢の植物を作ることだった。しかし、白い植物??
「この植物は乾燥に強く伸びる力もすごい。そしてなにより特徴的なのは電気です。」
電気?なんで電気?植物と電気ってなに?動物なら発電するやつがいるけど、植物が発電するなんて聞いたことが無い。それってカメに翼をはやすくらい突拍子もないことなのでは。
「もしや、そういう植物を作ったのが俺って思われてる?」
「違うんですか?」
思いっきり首をぶんぶん振った。
「しかし、この植物が見つかったのがあなたのいた研究所から近いところなんですよ。いま、すごい勢いで伸びて大変なことになってるんです。」
「大変って・・・。」
「どうやら電気を栄養にして増えてるのではと。おかげであの一帯は電気が使えない状態でして。」
「それで内戦は・・・。」
「いまどき、電気が使えないと戦争もできないんですよ。あの一帯、電波も雑音がすごくて。」
「じゃあ、この画像は・・・。」
「昔ながらのフィルムでとってプリントして飛行機で空輸です。」
どうりでパソコン画面やパッドを使わない印画紙の写真なわけだ。
「そんな電気ビリビリな植物なんか作った覚えはないですよ。」
「覚えはなくても現地の人たちが困ってます。日本としては誠意を見せたいのですよ。」
「誠意っていわれても。行ったところで何もできないですよ。俺は単なる農業指導員なんですし。」
「とにかく、このフィルムカメラを大量に持って行って、観察して駆除する方法を探ってください。」
「近くで写真撮って感電とか嫌ですよ?」
無駄と思ったけどごねて見た。
「ゴム長靴とゴム手袋、望遠レンズ、三脚、必要なものは揃えます。」
どうも断る選択肢はゼロらしい。
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