SNS既読無視パニック症候群

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恵子と手紙のやり取りを重ね、文香を送り合い――お揃いの便箋まで買ってみたりした私。 いつしか私は、SNSを見る時間より、机に向かって手紙を書いている時間の方が多くなっていた。 そうして、ふと気づく。 SNSを見ていたあの頃より、両親や友人達との会話が明らかに増えていることに。 と、いうのも――最近では手渡しによる手紙のやり取りだけではなく、わざわざ「記念切手」を購入し、郵送による文通も始めていた私と恵子。 親と久しぶりに会話をしたきっかけが、その、郵便ポストに届いた恵子の手紙だったのだ。 「あら……あんた、恵子ちゃんから手紙が届いてるわよ。それにしても綺麗な切手ねぇ。ほら、あんたも見てみたら?」 母に言われて目を向けてみた恵子からの手紙。 その封筒には――溜め息が出そうな程美しい、満月の形の記念切手が貼られていた。 しかも、薄くラメが散りばめられている為、見る角度によっては本物の月の様に輝いて見える。 「本当に綺麗……」 母と並んで満月の切手を見つめながら、そう呟く私。 と、私の隣にいた母が私を見つめたまま――不意に涙を流し始めた。 「お、お母さん?!」 母がいきなり泣き出したことに私は慌ててしまう。 が、そんな私に向かって、母は泣きながらも微笑んでみせた。 「いいのよ、いいの。心配しないで。お母さんね、嬉しかったの。久しぶりに、あんたとこうやって……顔を見て話せて。だってあんた、最近はずっとスマホの画面を見てばっかりで……まともな会話なんて出来なかったでしょう?だから、久しぶりにあんたとちゃんと話せたのが本当に嬉しくて……」
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