あんこ〜る

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 何度も何度もリピートして聴く。  歌詞を見ながら、口ずさむようにして聴くと、スッと頭に入ってくる。  こうしちゃいられないと、ベッドから立ち上がり一階に降りた。 「六花? お昼ご飯は?」 「お腹空いてないから大丈夫! ちょっとこれからレコーディングする!」 「あら、急にやる気になっちゃって」  顔を洗って、歯磨きをする。  喉を整えるために、ぬるめのコンソメスープだけ口にした。  歌う体に起きてきたら、再び二階の部屋に行く。  部屋着のまま、自分の部屋に置いてある0.5畳ほどの広さの簡易防音ブースに入った。  歌手になると決めた時に、いつでも歌えるようにと、30万もするこのテレフォンボックスのような防音室を買ったのだ。  中に入って小さなスタンドライトの灯りを点け、小さな簡易デスクの上に置いてあるノートパソコンの電源を入れた。  今度はスマホじゃなく、パソコンでアプリを開き、アップされていた曲をもう一度聴く。  なるべく音質の良いヘッドホンが欲しかったけど、私のバイト代で買える限界のものしか買えなかった。  でも案外気に入っている。耳心地が良い。  アップされている曲の概要欄には、楽譜も一緒に載せられていた。  聴きながら、パートごとに一回一回止めて、その度に音程を合わせて歌っていく。  録音しては止め、聴き、改善点を見つけもう一度歌う。  その繰り返しの中、何時間過ごしたのだろう。  もう歌詞も全部頭に入ってしまった。  ある程度音程が取れるようになってきたら、今度は息づかいの場所やアクセントに間違いがないかを気にしながら歌ってみる。  やっぱりゆったりとしたバラードは魂を入れて歌いやすい。  私の気怠そうな声質がフィットしている感覚がある。  気がつくと、もう夜だ。  私はレコーディング用の音源に声を入れ、気に入ったのをそのまま投稿してみた。  夜ご飯も食べずに、死んだように眠る。
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