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「六花ちゃん、最近体調悪いみたいだね? 大丈夫?」
次の日、私はお母さんとの約束通り、バイト先に来た。
バイト先の洋食屋は店長がとにかく良い人で、いつも私の心配をしてくれる。
こじんまりとした洋食屋とはいえ、ランチ時は待ち時間だって発生するくらい混むのに……私の突発休みを快く承諾してくれる、とても優しいおじさんの店長だ。
「店長、ご心配おかけして申し訳ありません。もう大丈夫なので」
「それならいいけど……やっぱり音楽活動と並行してだと大変だろうに。無理しないでね」
「ありがとうございます。こんな不安定なのに、雇ってくれて……」
「なーに、俺も若い頃はバンドマンだったんだ。六花ちゃんのこと、応援してるよ」
白いコックコートがよく似合う店長の笑顔。
必ず売れて、このお店に恩返しすると心に誓う。
精神的に不安定になることもあるけど、今はあんこ~るのおかげでモチベーションを保てている。
昨日夜遅くまでレコーディングしていたから、ちょっと眠たい。
休憩時間、バックヤードで賄いのオムライスを食べ終え、ひと眠りしようと思っていた時、アプリから通知が届いた。
動揺を隠せない私は、アイコンを連打するようにタップする。
「え、まさか……」
見たことのないビックリマークが、メニューの『投稿』という欄に付いている。
押してみると、『あなたがあんこ~るされました』という通知に飛んだ。
「あ、あんこ~るされた!」
誰もいないバックヤードで、一人声にする私。
そのまま立ち上がって、これからのフローを読んだ。
昨日歌い上げた曲の楽曲制作者から、課題の曲が送られてくる。
今度はそれを歌って、アップすればいいらしい。
すぐにでも作業に取り掛かりたい。
だけど、後半も働かないといけない。
夕方過ぎまで、私はバイトで拘束される。
これ以上、店長に迷惑はかけられない……働きながら、頭の中で次の曲のイメージを湧かすことにする。
次はどんな曲がリクエストされるのであろう……期待は高まるばかりだ。
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