魔法の色

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 黒澤(くろさわ) 黒子(くろこ)。そんな冗談みたいな名前が私の名前である。  こんな珍名が目立たないわけがなく、幼い頃からそれはもう散々に弄られた。  "まっくろくろすけ"に"黒子(ホクロ)ちゃん"なんて悪口(あだ名)はまだかわいい方で、嫌で嫌でたまらなかったのは"お葬式"。そう呼ばれることは大変屈辱的で、そして悲しかった。  自身の名をずっと恨みながら生きていたある日──それは確か中学2年生の頃だったと思う。  新任の美術の先生がこんなことを言った。 「黒は魔法の色なのよ」  黒は魔法の色、その響きが私にはとても素敵に聞こえた。だって"魔法"だなんて、ファンタスティックでロマンティックじゃない。"お葬式"とは大違い! 「黒はね、強い色。黒は他の色を簡単に塗りつぶして消してしまうけど、他の色からはなかなか塗りつぶされることはない。だから黒は絵を描く時には慎重に扱わないとならないの。絵の印象をがらりとかえてしまう魔法の色だからね」  黒は強い色、それも私に自信を持たせた。  黒は魔法の色で強い色……その言葉を思い出すと私は勇気と元気が溢れてきた。  こんな冗談みたいな名前も悪くない、そう心の底から思えたのだ!
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