魔法の色

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 部屋で揉み合いになった結果、男は足を滑らせ後頭部をベッドボードの角にぶつけて倒れた。それからぴくりとも動かない。  ……あれ? これって私のせい? 私が抵抗したからこうなったの? あれ? あれ?  頭の中が真っ白になって立ち尽くす私の足元に、男の赤い血が流れてきた。その時私は唐突に美術の先生の言葉を思い出し、近くのホームセンターへと走った。  黒のペンキを両手で持てるだけ買い、男の部屋へと戻った。そしてペンキを男の死体の上にぶっかける。 「黒は魔法の色、だから魔法みたいに消えてしまえ! お前の存在も、私の罪も! 全部全部塗りつぶされて消えてしまえっ!!」  叫びながら"魔法"を夢中で繰り返していると、追加で買って来たペンキもなくなってしまった。なのに──、 「どうして消えてくれないのよ!!」  男の死体は消えない、だから私の罪も消えない。  真っ黒に染まった部屋で私はおいおいと泣き続ける。  死体の前で泣くなんて、まるでお葬式みたい。 《終》
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