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ホームに滑り込んだ電車から飛び出して、改札を通り抜ける。
美香が待つ場所は駅前のカフェ。窓際の席に座っている美香の姿を外から見つけて、カフェに駆け込んだ。
手を振ってくれた美香の姿に泣きそうになる。
こんな俺でも、ずっと待っていてくれて、手まで振ってくれるなんて、優しすぎるだろ。
「本当に、ほんっとうに、ごめん!」
美香の横に立ち、深々と頭を下げる。目を固く瞑って、美香の言葉を待った。
「いいよ。その代わり、待ってた間のカフェ代、払ってよね」
ガバッと顔をあげる。
まぶしい笑顔だ、後光が差して見える。
「急いで来てくれたことは分かったから、カフェ代で許す!」
美香がクスクスと笑っている。その視線が俺の足元に向かっているのを見て、下を見た。
俺なりによく考えて練った、デート服。
新品の靴下。
履き古したサンダル。
最悪だ。
「寝坊して、パニックになったんでしょ?」
徐々にツボにハマってきたのか、美香の笑い声が大きくなる。
穴があったら入りたい。
椅子の上で縮こまった俺は、脳内で穴を掘りながら、美香の笑いがおさまるのを待つばかりだった。
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