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目が覚める。ぼんやりとしたまま少し考えて、俺は衝撃の事実に気がついた。
「数Ⅱの問題集やってねえ!」
今日は午後から期末テストで、数学Ⅱと物理。テストの日が課題の提出日なのに、困ったことに数学Ⅱの提出物に全く手を付けていなかった。
「やばいやばいやばいやばい」
今は8時。12時に家を出ればいいから、それまでに仕上げれば間に合うはずだ。大問数は約100問。1時間あたり大問25問、つまり、間に合わな……。え、どうしよ、やばい。美香に知られたら恥ずかしすぎる。え、ここは熱出すか腹を下すかして、仮病で休む? いや、テストの日に休むような体調管理できてない男もダサくね?
パニックで混乱する頭が思考を停止そうになって、顔をパンッと叩いた。
落ち着け、俺。全てを丸くおさめる方法は、とにかく12時までに課題を提出できる状態にすることだ。
「まじやばい! まじやばい!」
叫びながら、ドタドタと足音を鳴らして階段を駆け降りる。食卓の上に問題集を開いて解き出した俺を見て、朝食を食べていた父親が心配そうに言った。
「丸つけくらいはしてやろうか?」
「いや、全部答え写すから」
「シャーペンと赤ペン混ぜろよ。シャーペンで写したところは父さんが赤で丸つけてやる。ミスの偽装もしてやるよ」
少し悩んで、父さんの手を借りることにした。
俺はクラスではそれなりに真面目なキャラだと認識されている。そんな真面目なところを美香に褒めてもらったのに、提出物を出せなくて幻滅されたら最悪だ。背に腹はかえられない。
とにかく最速で答えを写していく。父さんの言う通り黒と赤を混ぜながら。途中式は出来る限り省略だ。途中式がなくても暗算できる天才だということにしておこう。
手が痛くなってきてチラッと時計を見ると、11時半。写した問題数は、30問。
「終わった……」
美香に、失望される。
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