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僕は楽器を構え、息を吹き込む。
ソロコンテストで演奏した曲をなぞるように指を動かす。
楽譜通りに。
あ、リードミスした。気を付けないと。
最後の一音を伸ばし切り、口を離した。
一度リードミスした以外はミスなく演奏しきった。
その安堵感と達成感から小さく息を吐き出す。
パチパチパチ。
不意に背後から拍手が聞こえ、勢いよく振り返った。開けっ放しにしていた窓の向こうに女子生徒が立っていた。
一体いつからいたのか。気が付かなかった。
「凄く上手ね」
胸元まである黒髪を下ろしている彼女は、にこっりと微笑んで言った。
「でも、上手なだけね。楽譜をなぞるように演奏しているだけ。ねぇ、あなた今何を考えて演奏してたの?」
笑顔で刺々しい言葉を投げつけて来た。
僕はムッとして彼女を睨みつけた。
そんな僕の睨みに怯む様子も見せない彼女は、ただ微笑んで質問への返答を待っているようだった。
「盗み聞きしておいて、酷い言いようだね」
「なら言葉を変えるわ。あなた、クラリネットを吹いていて楽しい?」
言葉は変わったけれど、刺々しさは変わっていない。
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