あこがれた音色

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「気付いてるのかと思ったら、気付いていないの? 伸びしろがあると分かっているのに、その意味が分かっていないのね」 「何が言いたいわけ?」 彼女の態度に、僕は結局謝罪なんてできないまま、さらに敵視するような言葉を吐き出した。 「あなたに伸びしろがあるのは本当よ。そしてあなたから本気を感じられないのは、あなたが楽しそうに見えないからだわ」 楽しそうに、見えない? 「グラウンドを見て。ボールを蹴るサッカー部。バットを振る野球部。コートを走るテニス部。彼らを見て。あなたにはどう見える? 辛そう? 苦しそう? 泣きそう? 今すぐにでも帰りたそうに見える?」 彼女に言われて、僕はグラウンドを見下ろした。 暑そうだし、辛そうではあるけれど、皆声を出して走っている。時には楽しそうに笑い合って、肩を叩いて励まし合っている。 「楽しそうに見えない?」 ……見える。心底好きでやっている人がする顔だ。 彼女の問いに答えなくても、彼女は気にせず言葉を続けた。
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