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駆け引きをしたのは間違いなく私だ。足踏み状態の関係を発展させるために、駆け引きは必要な手段だと思う。
ということは、私は響先輩との関係を前進させたいのか。と聞かれたら、間違いなくノー。
この感覚に囚われて、抜け出せなくなる方が恐ろしい。飲まれるほうが、圧倒的に。
さすがに怖くなって、何かに縋りたくて、私は彼の背中に爪を立てた。
「奥が好き?……本当にこないだまで処女だったのかよ」
知らない。こんなの、自分でも分からない。
あれ、これって現実?それとも、夢?
馬鹿な妄想にかられる。分かるのは、ただ響先輩に組み敷かれて、彼と繋がっている現実だけ。
「煽ったの、おまえだから」
朦朧とする意識のなか、響先輩が笑ったのを見た。
──「簡単に壊れんなよ」
終わりのない夜が、私を捕まえようとしている。
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