ワンナイト・ラブストーリー

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色々と反則級の手札をお持ちの彼は、手を出すのもいっとう早いという噂。飲み会に現れると、大体綺麗な人と消えている。 なんでも、彼はたいそうな気まぐれな性格をお持ちらしく、毎回遊ぶ相手は決まっていない。しかしさすがの一軍で、噂になる人はかなりの美女ばかり。 気まぐれなひと。誰にもチャンスを与えて、後腐れのない関係を好む人。 「(響先輩なら……私の処女も貰ってくれる、かな……?)」 処女のせいで恋愛が駄目になるなら、私の運命のためにも、早く卒業したい。 何度も想像してきた。今日がまぐれの日かもしれない。 まぐれのことを奇跡と呼ぶこともある。この奇跡が重なって、運命は作られるんじゃないかと私は思っている。 財布の中を脳内で確認する。三枚のお札がきっちりと入っているはずだ。このチャンスを物にせよと、ゴーサインがチカチカと点滅する。 可能性の可能性、それを信じてみる。ドッドッと、変に重たい血が循環しているのを感じる。 ニコチンの注入が終わったのか、喫煙所から数名の男子が出てくる。その最後尾に彼はいた。 酔い、というものは怖いものだ。最強の鉾になる。 「……響先輩っ、」 「……ん?」 私の呼び掛けに響先輩は釣られてくれた。同時に息を飲む。初めてこんな間近で響先輩を見た。喫煙後なのにいい匂いがするし、ビジュアルが爆発している。 無言は暴力だ。圧力と言う名の暴力だ。 響先輩を待たせてしまっている。美しいものを見た直後で頭が真っ白になった私は、残念ながら言葉が出てこない。
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