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知らない言語のような会話を聞いていると、ドンと誰かにぶつかった。知らない男子だった。
「あ、ごめ〜〜ん」
「大丈夫です……」
「て、枢木さんじゃん、今来たの?」
「あ、ハイ、たった今」
見ず知らずの人にどうやら認知されており、ちょっとだけ、怖くなる。近寄ったその人の目がにやりと細くなるので、よりいっとう恐ろしさが肥大する。
「まじでぇ?つか、枢木さんいつも女の子とばっか喋ってるから、ここにいるの珍しいねぇ」
目の据わったその人は、オレンジ色の液体の入ったグラスを受け取ると、そのままグイッと喉に流し込んだ。
うわあ……飲まれた……。
別にいいのだけど。また頼めば良いだけなんですけど。
「(私のファジーネーブル……)」
ほんの少しだけがっかりして、クラッカーのお皿に手を伸ばした。当初は仲間が居ただろう、一人ぽっちのオリーブとチーズのクラッカー。見栄えよく飾り付けられているけれど、ハッキリしない、ぼんやりとした味は私のようだと思った。
誰かに選ばれたくて中央に寄せられて、誰かに唾液を巻き散らかされて、なのに誰からも選ばれずに雑菌まみれになったそれを口に含んだ。私の胃酸で雑菌は溶かされるだろう。
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