シークレット・モーメント

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誰か、ではなく、悠來先輩だ。 「(ゆ、悠來先輩……!)」 私にとっては宇宙人との遭遇よりも緊張する。 切れ長の瞳と通った鼻筋、センター分けにされた紺色の髪。初めて間近で見る憧れの人に萎縮するのは妥当だろう。 「悠來、お願いあっち行って、いやあっち行け」 「ひど。勝手に振るなよ」 「俺、お前の相手出来ねえから。いま、100こくらいある聞きたいことまとめてるから、向こう行って?」 「誰?」 弾先輩越しに悠來先輩と出会う。 「こ、こんばんは……」 本日二度目の挨拶を贈る。一度目はスルーされたそれを、悠來先輩が受け取る。 「……ああ、響の」 「(響の?)」 納得する悠來先輩と、謎が膨らむ私。言葉っていうのはキャッチボールらしい。でも、こうもあちらこちらに渡されては、キャッチするタイミングも分からない。 「仁菜〜、来てたの?」 ふと、知った声が鼓膜に触れた。 「おつかれ、来てたなら言ってよ」 それは満面の笑みを浮かべた鈴乃たちだった。鈴乃はすぐに悠來先輩たちへと視線を移す。知識も無い私だけど、空気はよく読めると思う。 「悠來先輩たちも、おつかれ様です」 「何飲んでるんですか?」 突然大人数へと変化し、圧迫感に晒された空気が薄くなった。 「(……響先輩、遅いな、)」 苦手意識を持っているその人に助けを求めてしまう。
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