シークレット・モーメント

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響先輩の美しい顔が歪む。不安に駆られた私は考える。何か失敗したらしい。 「あの、遅かったから、」 様子を見に、と、ごにょごにょと言葉を飲んだ。響先輩は顔を傾げ、私をのぞき込む。 「寂しかった?」 見透かされた気がした。 「……さ、さびしくないです……」 恥ずかしい反面、不思議な心地良さがあるのはどうしてだろう。 強がると、響先輩があざとく微笑む。 「一晩中抱きついてたくせに」 「う、嘘ですよね」 「どーぞ」 響先輩は、真実の代わりにグラスをくれた。オレンジ色の液体が入ったグラスは、チェリーや傘で飾られていた。 「……可愛い」 素直な感想を零すと、響先輩が視線を移動させた。 「あのスタッフがサービスしてくれた」 つられてそちらを向くと、先程響先輩と話していた女性がいた。 「(スタッフさん、だったんだ、)」 勝手に動かしていた感情は、全て私の独りよがりなものだったと知る。 浅はかな感情を恥じると共に、固くなった空気が抜けて、軽くなった。
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