913人が本棚に入れています
本棚に追加
響先輩の美しい顔が歪む。不安に駆られた私は考える。何か失敗したらしい。
「あの、遅かったから、」
様子を見に、と、ごにょごにょと言葉を飲んだ。響先輩は顔を傾げ、私をのぞき込む。
「寂しかった?」
見透かされた気がした。
「……さ、さびしくないです……」
恥ずかしい反面、不思議な心地良さがあるのはどうしてだろう。
強がると、響先輩があざとく微笑む。
「一晩中抱きついてたくせに」
「う、嘘ですよね」
「どーぞ」
響先輩は、真実の代わりにグラスをくれた。オレンジ色の液体が入ったグラスは、チェリーや傘で飾られていた。
「……可愛い」
素直な感想を零すと、響先輩が視線を移動させた。
「あのスタッフがサービスしてくれた」
つられてそちらを向くと、先程響先輩と話していた女性がいた。
「(スタッフさん、だったんだ、)」
勝手に動かしていた感情は、全て私の独りよがりなものだったと知る。
浅はかな感情を恥じると共に、固くなった空気が抜けて、軽くなった。
最初のコメントを投稿しよう!