シークレット・モーメント

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面倒だから、と、響先輩は個室には戻らず空いている席に移動した。ふたり用で仕切られたカウンター席は、外の景色を眺めることが出来、まるで店内の一箇所が切り取られていると錯覚する。 簡単に乾杯をした。気持ちの良い軽音が静かに響く。今夜のはじまりの合図だ。 「宇宙人いなかった?」 「はい。弾先輩しか見当たりませんでした」 「居たじゃん」 「……(宇宙人なの?)」 弾先輩の宇宙人説が浮上する。響先輩が言うに、弾先輩の言動は偶に理解が難しいという。先程の弾先輩を思い出せば、頷ける部分もある。 二人で話をしていると、何処からか「あれ、響は?」「さっきまで居たけど 」と、どこからか会話が聞こえてきた。私以外にも、響先輩を探す人は多いらしい。 「探されてますよ?」 「そうだね」 「行かなくて良いんですか?」 「別にいいかな」 「(どうして?)」 私の時とは別の反応に些か困惑すると、響先輩が方を寄せる。物理的に詰まる距離。 「親しくないのに俺の家とか探ってくる子居るわけ。怖くね?」 「それは……怖いですね」 あの子たちがそうだと言うのか。人気者の苦労を知る。 「匿って?にーな」 響先輩が淡く微笑む。これは、情報を共有した宿命か。
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