シークレット・モーメント

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連れられたのは先週とは別のホテルだった。せっかく帰宅しやすいようにと大学の近くで飲んでいたのに、遠回りして歓楽街にくるなんて、響先輩は一人暮らしじゃないのかな、と、タクシーの中で私はぼんやりと考えていた。 ホテルの部屋に入ると首根っこを掴まれ、強引に上を向くとキスを誘導された。貪るようなキスを繰り返したあと、舌がぬるりと侵入する。 驚く思考とは裏腹に、口は簡単に響先輩を受け入れる。前回貰ったキスのときのように。 私の唾液と響先輩の唾液が交換され、口の中で合わさる。 私が取り込んだ雑菌は響先輩の元へ届けられ、胃酸が溶かしてくれるだろうか。 キスが終わると、響先輩は私の顔を優しく撫で「今日は酔ってねーな」と、不本意な言葉を聞かせる。アルコール1杯ではさすがに酔いたくても酔わない。 それよりも、私には気になることがあった。 「あの……おかね、いつ払えば……」 「金?タクシー代?」 「タクシー代もですけど、今日の分の、一万」 「一万?……ああ、こないだの続きだと思ってるわけ?」 「……違うんですか?」 「違う。勝手に俺を風俗にするな」 「風俗?……あ、そうか、お金を払ったら風俗になっちゃいますね」 当たり前のことを納得してしまう。響先輩を犯罪者にさせるわけにはいかないのだ。
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