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ワンナイト・ラブストーリー
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ああ、困った。私の人生はほとほと困り果てる場面がなんと多いことか。
飲み会のこの場は色々とさわがしい。男子の声量は圧倒的に大きいし、香水の匂いがまざって慣れるまでに時間が掛かるし、そこかしこで噂の類が飛び交っている。
飲み会はいつも、情欲と、好奇と、愉悦の香りがする。
「それはそうと建築科の御園さん、あの集団の誰かに泣かされたらしいよ」
例に漏れず、私の周辺でもどこで撒かれた種なのか噂話が花を咲かせており、話は大体、ある一軍男子と決まっている。
「うわ、本気になっちゃったんだ」
「しかもあの子処女だったらしくて、周りに超愚痴って、どっちが被害者か分かんないってウワサ」
「気の毒すぎん?処女とか面倒くさそう〜……」
加わるタイミングをなくした私は、「だよね」といつもの調子で返事をして、困惑と一緒に枝豆を噛み締め、ビールで流し込んだ。
「でも、処女に戻れるなら最初はあの辺に捧げたいと思うよね〜」
「抱かれたいといえば、悠來ゆら先輩か響ひびき先輩だよなあ」
「あの二人に抱かれたら、死んでもいいかも」
「わかる〜!!」
「(……帰りたい……)」
何が上手で、何が下手なのか、私は見当もつかない。
何がわかって何がわからないかも、残念ながら右に同じ。
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