きみと私の降伏論

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「(何やってるんだろ、私……)」 勢い任せの前回に比べて、今回は抱かれることを前提に着いてきて、当たり前だけど記憶も仔細に残されている。 「(脅されてるはずなのに)」 寧ろ最後は、私から求めてしまった。私を求める余裕のないあの声も、快楽に滲んだあの表情も、熱でうかされた脳内で響先輩の声が再生されると、きゅんと胸が揺さぶられる。 「(ていうか、鈴乃たちに知られたらかなりまずいのでは)」 可能性を想像すると、勝手に背筋がぞわぞわとする。湯船に浸かっているのに。 「(今後は、必要以上に会わないようにしなきゃ)」 私が持てる武器は、そうだ、“響先輩の秘密をバラしますよ”って、脅迫返しをすればいい。響先輩の秘密を確保しなければ。 よく分からない決意と共に一休みしていると、何の前触れもなく浴室のドアが開いた。湯気が外の世界へと逃げていく。 「……っ、へ、」 「熱い?」 響先輩だ。逆に、響先輩じゃなかったらホラーだ。事件だ。魔法だ。 「……!な、んで!?」 「何でがなんで?」 「なんで、入って来てるんですか!?」 「入浴の為に参りました」 「お、お風呂だけですね」 「何もしないよ」 縮こまる私を嘲笑うように、響先輩は湯船に足を浸けた。ちゃぷ、と静かな水の音を後ろで聞き、そうして背後から私を引き寄せる。
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