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彼女……鈴乃は、大学に入って仲良くなった人だ。彼女は私が悠來先輩に、ほんの僅かな恋心を抱いていることをしっている。知った上で、飲み会の場で私を処刑台に立たせる彼女の心境が分からない。
──おそらく、酔っているからだ。
酔い、というのは怖いもので、大抵、「酒に酔っていた」で済まされる。なんて無敵な予防線。どこがこころの特効薬だ。これじゃあこころの特攻隊だ。
「ないない、有り得ないよ」
頼りたくないのに、今ではお酒に縋りたくて、取り敢えずビールを煽った。程よくアルコールが廻る。
「ほんとに〜?」
「本当だって。超泥酔しても有り得ないよ」
「まあ確かに、泥酔状態でお持ち帰りされても仕方ないよね」
「つかその前に、泥酔してる女を持ち帰る男って、下手くそなのが多いよね」
上手く話が逸れて安堵した。
一旦、場を離れた方が良いと思って、ハンカチとスマホを持って立ち上がる。部屋を出て、困り果てた気持ちに蓋を閉じようと深呼吸をした。……と。
「言うかな?」
「仁菜だったら勝手に遊びそうじゃない?」
「遊び放題だろうし、既に遊んでるかもよ」
酒のつまみと化した私の成れの果てを背中に聞いて、居酒屋のスリッパにつま先を潜らせた。
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