ワンナイト・ラブストーリー

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駆け込んだ先のトイレで困惑を流して、やっぱり鏡の前でため息。 白状する。いえ、どうか白状させてください。私は、男性と邪な気持ちで遊んだことなんて一度もありません。そんな場所とは無縁な人生を送っています。 さらに言うと、先程の" 御園さん "の一件は、昨日の昼休み、それらしき会話を聞いてしまったのです。 『こないだ、ホテルに行った子が処女でさ』 『うわー、めんどくさ』 『血とか出て、もう最悪。一瞬で萎えたわ』 曲がりなりにも接点を持っているから、声で分かった。一軍男子たちの声だって。 そうと分かればさらに困った。 なぜなら私は、そう、処女なのだ。 付き合った経験はある。彼氏と同じベッドで眠ったこともある。しかしできなかった。できないまま付き合っていたら、気付かぬうちに振られて、気づけば次のお付き合いが始まって、また、何事もなく終わっている。 私の恋愛は初めから崩し将棋のようだ。Aまではすぐに進むのに、Bが遠く気づけばどこからか綻びが生まれて、バラバラと崩れ落ちる。 自慢じゃないけれど、私の恋愛偏差値なんてその程度なのに、女子は表面では取り繕い裏では花を咲かせ、男子はまるで崇拝の対象のような扱いをする。 おかげで遊んでいるだとか、ヤリマンだとか。噂話ばかりがヒールを履いてスキップしている状態。 この状況を大学では払拭したかった。 イコール、処女だと早々に打ち明ければよかったのだけど、私の計画はそう上手くいかない。 見た目から恋愛経験値があると思われ、今更処女なんだよね!というワードも禁句のように思える今日この頃、好きな人は処女が嫌いという情報を貰って、さらに撃沈。 どうやら悠來先輩に恋心を抱いても、悠來先輩から恋心を抱かれていたとしても、詰み手を全て研究され尽くした詰将棋。進まない恋物語らしい。
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