着実に道筋を絞っていく。

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着実に道筋を絞っていく。

 その時、サークル室の扉が開いた。お疲れ様です、とみっちゃん、さっちん、えりの後輩三人娘が入って来た。おぉ、いいメンツだな。信頼出来るし真面目ないい子達だ。あと、お喋りが好きなところも今日はポイントが高い。 「お疲れ。来てくれたか」  私の言葉に、え、と三人とも目を丸くした。 「何ですか、来てくれたかって」 「メッセージを呼んで駆け付けたわけじゃないのか」 「メッセージ?」  みっちゃんが首を傾げる。ん? とさっちんが異変に気付いた。 「そこに転がっているの、八戸君ですか?」 「何か変なところを押さえてない?」  えりが引き気味に指摘をする。違うの! と再びパニクり始めた恭子がぶんぶん手を振った。 「これは、あの、そうじゃなくて、いや私がやったんだけど、あ、やったって蹴り上げただけで、でも先にやられそうになったって言うか、正当防衛なんだけど、子種次第では過剰防衛かしら!!」  どんだけパニクってんだよ。後輩達は呆気に取られて恭子と八戸君を見比べる。 「恭子さんが八戸君の股間を蹴り上げたんですか?」 「だから彼は股間を押さえて倒れているの?」 「でも正当防衛って、どうして?」 「それはね!」  口々に疑問を述べる後輩と、あたふたと私以外には伝わらない説明を続けようとする恭子の間に入る。そして、メッセージを見ろ、とだけ伝えた。三人が一斉にスマホを取り出す。え、とまたしても揃って声を上げた。 「これ、完全に八戸君が悪いじゃん」 「恭子さん、断ったんですよね? なのに肩を掴んで迫って来るって危なすぎる!」 「最っ低! マジでキモイ」  そこまで言わなくても、と何故か被害者の恭子がフォローに回る。人が好すぎるのか、まだパニクっているからか。或いは両方かね。ともかく再び私は口を開く。 「三人とも、怒ってくれてありがとう。そして君達が来てくれたから私と恭子で看護師さんを呼んで来る。その間、容体が急変しないか見ていてくれ。息はあるが何が起きるか心配だからね」 「えぇ? そこまでしてあげる必要、あります?」  さっちんが露骨に顔を顰めた。 「万が一の事態があっては寝覚めが悪いからな。ほら、恭子。行くぞ」  だけど恭子は首を振った。どうしたんです? とみっちゃんが顔を覗き込む。 「駄目よ。だって看護師さんに知られたら八戸君が大学を追い出されるかも知れないんだもの」 「あ、そうか。恭子さんに乱暴をしようとしたからか」  流石みっちゃん、理解が早い。そうなの、とさっきまで何も知らなかった恭子が頷く。おい。 「だから八戸君の意識が戻るまで待ちましょう。葵に何と言われようと、私、泌尿器科に付き添うわ。そうしなきゃいけないだけの責任がある! だって彼の股間を蹴り潰したのは私だもの!」 「そうせざるを得ない迫られ方をしたのはいいのか?」 「良くない! 良くないけど、それについては彼が回復してから話し合うわ! まだ十八歳だし、分別のつかない部分もあると思うもの」 「成人だぞ」 「三つも年下よ! それに、彼にも親御さんがいるでしょう。折角大学へ入ったばかりなのに息子が入学二カ月で処分されたらやり切れないと思う」 「そんな息子に育っちまったんだから親にも責任があるんじゃねぇの」 「いいの! 私も結果的に無事だったし、むしろ彼の股間が無事じゃないけど、無事じゃなかったらどうしよう! 子種が無くなってしまったらやっぱり責任を取らなきゃいけないかしら!」  またパニクり始めたよ。わかった、と恭子の両肩に手を置いた。 「まず、彼が動けるようになったら状態を聞こう。もしかしたら一時的な痛みでダウンしているだけで病院へ行く必要も無いかも知れない」 「失神しているのに!? 無事なわけないじゃない!」  失神ねぇ。 「断定するのは早いっての。第一、我々一同、全員女子だ。陰嚢を蹴り上げられた痛みがわからん。今ももしかしたら意識はあって、ただ痛みで身動きが取れない状態の可能性もある」  後輩三人が、確かに、と頷く。でも、と恭子は一人食い下がった。しかし私はまだ止める。 「落ち着けっての。わからんものをむやみやたらと心配する必要も無いだろう」 「さっきは看護師さんを呼びに行こうって言っていたじゃないの」  む、確かにな。仕方ない。 「では白状しよう。八戸君を処分して貰うことが私の目的だった」
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