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◇◆◇◆
「ありすちゃん、バイバイ」
しおりが泣きながらありすに別れを告げた。ありすちゃんママは、先日自宅で心臓発作で亡くなった。ちょうど夫が出張で留守だったこともあり、翌朝幼稚園にありすが登園せず、母親にも連絡がつかないことを不審に思った幼稚園の先生から連絡を受けた夫が急ぎ帰宅したところ、倒れているありすちゃんママを見つけたそうだ。ありすちゃんは、ベッドで寝ていたらしい。
葬儀が終わり、近々ありすちゃんは別の家に引っ越すことになった。幼稚園も変わるらしい。
「ねえパパ。もうママのお歌をうたっちゃダメなの?」
「あのお歌は歌って良いときと、ダメなときがあるんだよ。パパがママにそう言われているんだ」
「ママが言うんじゃ仕方ないね」
しおりの手を握っているのと反対側の手を冷たい何かが触れた感じがした。
まったく、死んでも嫉妬深い女だな、お前は、と心の中で毒づく。俺の浮気のたびに気が狂ったように喚き散らして、最後は呪いの歌みたいなものを残して首を吊りやがった。
まあ、お陰で俺は女遊びしやすくなったよ。なにせお前の呪いは、俺にちょっかい出してきた女を呪い殺すんだからな。相手の旦那にバレそうになったり、子どもができたとか言われても、お前が勝手に処理してくれる。証拠も何も残さず解決だ。
歌がきっかけで発動するとは、使いやすかったけれど、いずれしおりも何かおかしいと気がつくだろう。
さて、そのときはどうしようかな。
了
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