愛してるゲームとポッキーゲーム!

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愛してるゲームとポッキーゲーム!

「今日、どんな配信するー?」 ミナミ君が言ってきた。 それを聞いて、企む悪い顔してるのは、とおる君だ。なんかもう、すでに決めてるみたいだ。 俺達は、ファンの為に時々動画配信してる。だいたいネタを考えてくれるのは、3つ歳上の2人、ミナミ君andとおる君だ。 「ちょっとさ、面白いの見つけた…愛してるゲームしない?」 と、ニヤニヤしてるのは、とおる君。 「なんそれ?なんそれっ!」 ミナミ君は、聞き返しながらも、もうそれで決定してるみたいな顔してる。 満足そうに不敵に笑うとおる君。 「まず、俺とリヒトでやるからな。愛してるって言い合って照れた方が負け…簡単だろ?判定は、るいとミナミでやってくれ。」 頷きながら笑ってるロイ君とは対象的に、少しだけ歪んだ顔をしてるのは、るい君だ。 じゃ、始めるよ〜と、カメラが回る。 先行はとおる君。 「愛してる…」 すごい低音の渋い声で攻めてくる。 「愛してるっ」 俺は可愛い声を繰り出す。 何度か繰り返すが…一向にどちらも反応が薄い…勝負つくかなぁ、コレ。 と思い始めた時。 「はい、チェンジ!」 とおる君をグイグイと押し退けると、俺の前には、スっとるい君が立つ。 少し見上げるように背の高い彼を見る。 一呼吸おいて、俺の肩に手を置いて、るい君がゆっくりと口を開く。 「リヒト……愛してる…」 目を見つめられ…小さく呟かれた言葉は、俺の脳内から…身体中を駆け巡った。 とおる君と同じ言葉とは思えないアイシテルという言葉。 ダメだ……コレ…ダメ。 呆然と立っているだけの俺に、横から声がかかる。 「おーい、次、リヒトの番だぞぅ〜」 急にバトンタッチされた事に、全く怒る事も無く、むしろ面白がってるような声色のとおる君からの声援に、ハッと我に返る。 そう、動画が回ってるんだコレ。 「あ、愛してっ…る…」 相手が変わるだけで、こんなに言葉が出ないものかと…自然と言葉尻が小さくなる。 急に目の前で愛を囁くるい君に、作戦なんて思い付くはずも無く、なんとか言葉を吐くのが精一杯で… 俺は思わず俯いてしまった。 俯いた俺の顎を、クイと指先で上に向けられた。え、るい君? 「可愛い顔見たいから、下向かないで…ね?………愛してる」 ひぃーーーーーっ! ファンサが過ぎるよ…コレ。 俺の心の叫びは、何とか口に出さずに済んだが…これは、心臓が持たない。 何の拷問だか…ヤバい。 ドクドクと心臓が鳴る… るい君に、こんなに近く、目を深く見つめられるのは、初めてで… 俺は思わず目をギュッと瞑る。 この状態で目を開けてたら、確実に崩れ落ちる。 ゲームを続けなくて!という使命感だけが、頭を占めているので、なんとか そのまま…言葉を出す。 「るい君……愛してるっ!」 クスッと笑われ、 「ん?目を閉じてるってことは、もしかしてキス待ちなのかな?……リヒト、愛してる」 ゲームは、続いてるのかー! セリフが長くなってきてるのは、ルール違反では無いのか?ストップが全然かからない……続行かよ。 隣りの2人からは、揶揄うように。 「キスゲームに変更でも、構わぬぞよ。」 「我も、見たいぞよ…」 クスクスと、煽るようなヤジが2人から飛んでくる。 「もうっ!ギブッ!ギブアップ!!てか、2人とも判定は?とっくに、俺の負けだろっ?動画止めてっ!」 後ろに飛び退き、戦線離脱した俺は、横の2人に向かって八つ当たりする。 「いやぁ〜だって、なんか、めっちゃ可愛い反応してるから…リヒトが。な?」 とおる君が、隣のミナミ君に同意を求める。 「うんうん、これは、ファンサになるな〜と、思ったよ。」 大きく頷きながら答える。 顔が真っ赤になってる俺に、そんな風にした当の本人のるい君は、 「僕は2回戦目もやってもいいけど?あ、リヒトとならね。」 その言いっぷりに、歳上組2人が、おっ!って輝く反応を見せたが、 「はい、終了です…俺が無理」 正直に答える。 チェーッと、ブーイングの声を上げるが、無視無視。 「なんか、他に無いの?」 俺はツーンとしながら、とおる君に聞いた。 「あるある!これは、ほんとにファンの子達からのリクエスト!11月11日って、ポッキーの日じゃん?色んなアイドルグループが、動画あげてるから、ポッキーゲームの。」 色んなアイドルグループが? 対抗心が人一倍強い俺は、そう言われると、1つ返事で『やる!』と、答える。 早速!と、ポッキーを出してきたとおる君… 偉く用意がいいな… とおる君は、ポッキーをガサゴソと開封して、1本口に咥えると、クイクイと指を折り曲げて、ミナミ君を指名した。 「オレ?え、オレ?」 イケメン二人のポッキーゲームが始まった。 両端からポリポリと食べる2人は、残り3センチ程を残して、落ちるポッキーを手のひらで受け取り、ギリギリで唇を合わすこと無く終わらせた。 見てる俺のがヒヤヒヤしたけど、2人は全然余裕そうだった。 「どうよ?これより短く出来るなら、晩御飯奢ってやるぜ、るい!リヒト!」 ポッキーを振りながら煽ってくる。 「やる!僕、奢って貰うの大好きっ!」 出た!…金の亡者キャラ…るい君。 煽り方知ってるよな…さすが…と言うか、リーダーのとおる君は、みんなの事をかなり、ちゃんと分かってる。 「はい、リヒト!」 口にポッキーを咥えると、笑顔で俺に向いたが、目が……マジだ…… これは、奢って貰うのを完全に視野に入れてる顔だ。 若干の身の危険を感じる…が、俺もオトコだ!やってやろうじゃないか! さっきのゲームよりは、何故か大丈夫な気がする、そもそも距離が近いとこから始めるし、ポッキーを食べる事に集中したら…うんうん。 良し!イける! なんでも無い事のように、やってのけた2人を見てるからか、何故か大丈夫だと思って、自信を持ってポッキーを咥えた…… が!間違っていた!全然大丈夫じゃなかった…咥えた瞬間に後悔が押し寄せる。 目の前に好きな相手が居て…ポッキーゲーム… 何故大丈夫だと思えたのか……自分で自分が信じられない。 るい君の綺麗な瞳を見ながら… やっぱり止めようと思った時には、すでに、ポリポリと、るい君が食べ進めてきた。 俺が1口ポリっと噛んでる内に、るい君は、ガリガリと食べ進んでくる… え、え?え、うわっ…と、焦っている間に… すでに唇は、重なっていた。 チュッとリップが音1つなって、最後のポッキーは、するりと俺の口から出て、るい君の口の中に収まった。 しかも、最後に唇をペロッて、ひと舐めされた気がする… 「ふ、ふ、ふふふふは!はははっ!寿司ね?今夜はシースー!」 どうよ?とドヤ顔のるい君が、とおる君に言う。 「ハイハイ、いいよ、回ってるヤツでいいよな?奢るわ〜」 「ちょ、ちょっと待って!今の!動画!アップしないでっ!ダメだから!」 ん?と、るい君ととおる君が振り向く。 「撮ってないよ?」 「うん、リヒト、気付いてなかったの?ポッキーゲーム、撮ってない…よ?(笑)」 なんだよ!なーんーだーよーぅ! だから、あんな余裕で… いや、でも、唇…重なったよ…な?… 改めて指を唇に持っていくと、なんか感触を思い出してしまい。 クルッと後ろに向いて盛大に赤面した。 トントンと、肩を叩かれる。振り向くと、満面の笑みのるい君と目が合う。 「リヒト、唇柔らかだねぇ〜僕、癖になっちゃいそうだよ(笑)」 コソッと耳打ちされて、俺は、どう反応したらいいか困った。 俺の反応を見て、また嬉しそうにしてるるい君は、絶対にドSだと思った。
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