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るい君の匂わせ投稿。
今日は、久しぶりに4人での打ち合わせ。
そろそろお腹も空いたし解散だな…って流れの時に、るい君が突然発言した。
「僕、匂わせ投稿がしたい…」
「「はい?」」
ハモったのは、俺とミナミ君
「すでに、匂わせまくってるのに?」
とおる君は、クスクス笑ってる。
匂わせ投稿とは…所謂、良い仲だという事をアピールしたいが、あらかさまなのはマズイので、分かるか分からないかの微妙なモノを投稿し、観ている人に、感じ受け取って貰う…という、アレか?
「いや!今までのは、ステージ上とか、配信とかで、若干、みんなもビジネスカップルを装ってるって、分かってるヤツだから!そうじゃなくて、プライベートなヤツで、アピールしたいんだもん!」
だもん!って、可愛く言われてもなぁ…
俺は、これ以上、るい君のファンに嫌われるのはゴメンだ。
それに…この間、キスの猛特訓から、発情してしまった俺を慰める為に、るい君にエッチな事させちゃったのもあるし、二人きりは…俺がどんな風に変化するのか、分からない。
るい君の事は確かに好きだけど…
この間だって、性欲の少ない草食野郎だと自分を思っていたのに、いとも簡単に、イケイケモードへと変貌させた、るい君との触れ合いが、少しだけ怖い。
未知なる自分を知るのは、もう少し先でも良いと…及び腰なわけで。
しかも、そもそもだ!
まだ、恋人同士でも無い!なのに、そういう事をしてはイケナイのだよ?俺ってば、結構、真面目人間なんだからな。
心の中で、一人考え込んでいると…
「ねぇ、デートしよ!ダブルデート!」
るい君が提案してくる
「いや、俺とミナミは、別にカップルじゃねぇぞ?」
とおる君が冷静な返しをしてくる
「俺達だって!恋人とかじゃないよぉ!」
俺が抗議の声を上げると
「え?リヒト、恋人同士じゃないとか言うの…僕、遊ばれてたんだ…」
わざとらしく泣き真似をする、るい君、ズルい。
「あのさ、そもそもダブルデートって、必要無くね?二人でとっとと、デートして来い、ダブルで投稿なんてしたら、それこそ、ただの配信だと思われるだけだぞ?俺は、ミナミとカップルで売るつもりは無い!リヒト、行って適当に写真撮って来い。リーダー命令だ!」
チラッとミナミ君を見ると、少し浮かない顔してる、いつも元気な彼の珍しい姿に、若干驚いた。
それも一瞬の事で、パッといつも通りの笑顔のミナミ君は
「おう!行ってこい!ビジネスでも、本当でも、俺は、どっちでもいいし」
適当オトコだ、相変わらず…
「はい、決定〜!リヒト、行くよね?」
プレッシャーがすごい…
「行きますよ…リーダー命令ですから」
なんて言いながらも、ちょっぴり嬉しい俺…
好きなのに、それを禁忌事みたいに隠してて。
本当は恋人同士になりたいのに、ファンからの目を怖がってて。
もっと一緒に居たいのに、性欲魔人みたいになる自分を見たくなくて、ツンツンした態度取っちゃうし。
良く考えたら、俺…めちゃくちゃメンドクサイヤツじゃん。
「どこ行く?」
「え?あー、うーん…人目に付くとこは、流石にヤバくない?」
「じゃ、個室の…ラブホとか?」
「それは、無しでお願いします。それじゃ匂わせになんないだろ?」
「え〜ダメなのぉ?じゃ、定番だけど、個室でご飯ね!その後…リヒトが行きたがってた、あの深夜営業限定のジェラート屋!」
「それは…ちょっと行きたい…」
なんか、若干…上手いこと乗せられた気もするんだけど…
俺が会話の合間に零しただけの言葉を覚えてくれてた事が嬉しかった。
ちょっと店を探そ…
ってスマホをいじる彼の指を見る。
この手は、この間…俺のを触ったんだと…瞬間的に思い出してしまい、一気に顔が火照る
「何が食べたい?」
顔を上げずに聞いてくれて助かった
「俺、和食が良い…」
「OK!!待って、クチコミの良いトコ探す〜」
「ここどう?」
スマホで、店の画像をスクロールさせながら、聞いてくれる、るい君とは自然と近くなる。
俺は、赤くなるのを我慢するので精一杯で、そこで良いよ…と答えた。
あんまり高級そうじゃなく、でも落ち着いた雰囲気の個室ありの和食屋だった。
サラッと電話で、個室で予約を入れてくれた。
やる事がスマートな彼、カッコよすぎ…と思ってしまった。
事務所からタクシーで20分程度、歩いても行けない事は無いけど、やっぱり顔バレして騒がれてしまうのは困るので、タクシーで行く事にした。
着いた和食屋の店構えは、オシャレな感じで、古民家を改装したような感じ、都心だという事を忘れそうな、懐かしい感じがとても気に入った。
店内に入るとすぐ、下駄箱があり靴を脱いで上がるスタイルだった。ツヤツヤした黒張りの床が敷き詰められ、歩くと少し軋む感じを楽しんだ。
通された個室は、本当に完全な個室…これなら、周りを気にする必要は無さそうだ。
掘りごたつになっていて、ワクワクしながら座ると、向かいにはるい君が腰を下ろした。
「ここ、凄く良いね!」
俺が言うと、嬉しそうにする彼は、メニューを開いて見せてくれる。
俺は刺身も食べたいし、煮物も良いし…炊き込みご飯も…なんて迷っていたら
「適当に好きなの頼んで二人でシェアしたら良いんじゃない?」
と提案してくれた。
るい君、優しい…
俺の食べたい物を5品頼み…結局、るい君は2品選んだだけ…
いいの?って聞いても、良いんだよ…って柔らかな笑みをくれただけ。
俺が個室の中を見回してると
「ねぇ、リヒト…僕の恋人にならない?」
「えっ…それは…えっと…」
「僕の事嫌い?」
「嫌いじゃない!でも、るい君こそさぁ…平気なの?俺、オトコだよ?」
「それが何?」
「何って…あと、俺らアイドルだし、同じグループ内だし、やっぱり、ファンを困らせるよね?」
「それが理由?僕は、ファンも勿論大切だけど、同じくらいリヒトも大切なんだよ」
サラッとこんな事を言ってくるなんて、俺の心がグラつく。
本当に…どうしよう…俺はどうしたい?自分に問いかけるけど、明白な答えが出せず、返す言葉も無かった。
「もしかして…気持ち悪い?僕の事」
「はぁ?!そんな事、絶対無いし!こないだだって、めちゃくちゃ気持ち良かったし!」
悲しい表情をする彼に、つい出た言葉。俺はいったい…何言ってんだよ…
「リヒトは、本当…天然で煽ってくるよね?まぁ、いいや…もう、片想いも既に長いし…気長に待つよ」
片想い期間が長い?それは、初耳なんだけど…
すごい詳しく聞きたかったけど、それを聴いたら益々深みにハマりそうで…
「あれ?リヒト…右の人差し指とこ赤いけど、切ってない?」
るい君から、急に会話は違う方向に向かった
「あー、昨日、ちょっと…紙で」
痛そう…って、傷口にるい君の人差し指が、触れた。
途端に…痛みなのか、違うモノなのか…身体に衝撃が、ビクンと走る。
反応してしまった事を隠そうと、俺が手を引く前に、るい君は俺の手を絡め取り、恋人繋ぎをした。
さっき、気長に待つと言った人の行動では無いぞ…
その絡めた手は、俺の手の甲を軽く擽る。遊んでるのか?と思ってると、手のひらをなぞる指が蠢く。
俺のお気に入りの指輪をクルクルと回すように触った後、そのままスルリと2つの指で、俺の指を挟み込み上下に擦った。
その行為に、俺の腹の底がゾクリとなった…
何これ?!顔を上げてるい君の美麗な顔をを凝視すると、満面の笑み…
これは…なんか、ヤバい。
逃げなきゃ…と思うのに、手を引けない…むしろ、指が触れてるだけなのに、こんなにビクリと身体を震わせ、顔を赤める俺の方が間違ってるような気がした。
ただのじゃれ合いなのに、俺だけが、エロい方に取ってるみたいで、引くに引けない。
そうしてる内、またもや…俺の中心部分が誤作動を始めた…そう、硬くなりつつある俺自身。
脚をギュッと閉じた。
掘りごたつでマジ助かった…これならバレない。
そう思っていたのに…
俺の中心部に何かが触れた。
下を見ると…るい君の足先だ!!
ギョッとして、彼の方を見たら、変わらずの笑顔は、1ミリも崩れていない。
俺は俯いて、膝にチカラを入れようとするのに…そうはさせないとばかりに、るい君の足先はヤワヤワと、俺のモノを巧みに刺激してくる。
手の動きと連動するみたいに、上下する、るい君の足先。
器用にも程がある…
次第に、その与えられる愛撫みたいなものを求めるように…
俺の膝は、開き始めてしまう。
まるで、もっとして…と言わんばかりだ。
俺はいつから、こんな淫乱になってしまったのか…
自分を叱責したところで、身体は言うことを聞いてくれない。
どんどん開いてゆく俺の膝…
俯いてるけど、俺の視線は、絡まれている二人の手から剥がせない。動く様を見ては、気持ちが昂ぶってしまう。分かってるのに、視線は固定されたままで。
惚けそうになっていった…その時。
コンコン。
「失礼します〜」
ビクッッとなって、俺は一気に身体を引いた。
女性がにこやかに入室し、俺達の目の前に、注文した食べ物が並べられていく。
そうだ…ここ、店だよ!
キッと、るい君を睨むけど、何かあった?みたいに笑ってる。
「料理も来たし。さあっ、ここまでだよね?恋人同士じゃないと、エッチな触れ合いはしたらダメ!とか、前に言ってたもんね、リヒト」
どこまでも美しい完璧なる笑顔で言われた。
確かに…何かの配信で、ファンの相談コーナーみたいなので、言ってたわ…俺。
触れ合ったり、エッチな事をするのは、キチンと恋人同士になってからだよ!!
でも、そのエッチな事のボーダーって何だ?
今更だけど…
るい君次第になってないか?
止めるタイミングも進めるタイミングも…結局、いつも俺では無いような。
既に、俺を揶揄う事に満足し終わったのか、スマホを取り出し、写真を撮る気満々のるい君。
「ちょっとリヒト、そのコップに右手を添えて〜」
俺の頼んだコーラにお気に入りの指輪をした手を添える。
カシャ。カメラの音がして、こちらに画面を向けて、撮りたてを見せてくれる。
湯気の登る美味しそうな彩り豊かな和食の数々と共に、誰かと一緒なのは、なんとなく分かる写真。
俺は、手元しか写っていない…
お酒に弱い俺は、大概いつも、コーラを飲んでいる。ファンならば知ってる情報。
確かに、これなら、いつも付けてる指輪とコーラで…分かるファンの子には、分かるかもしれない写真。
まさに、めちゃくちゃ匂わせな写真だ。
確信犯だ…るい君。
「さっ食べよ、食べよ〜」
「いただきます」
俺は、好物ばかりに囲まれて、次々に口に入れては美味い〜!と言い、至極、上機嫌な俺。
そんな俺を見つめてくる、るい君の瞳は、とても柔らかく、食事をしてるのか、只々甘やかされてるのか、分からなくなった程。
絶対に割り勘だから!!と譲らない俺と、奢るから!と言う、るい君との間で一悶着はあったが、凄くゆっくり出来て、とても楽しい食事時間だった。
「デートのしめは、スイーツだよね?」
「デート?違うからね!」
まぁまぁ〜とか、言われながら…
行きたかった22時からしか開いていないジェラート屋へと向かった。
近いので、歩いて行く事に…
平日の夜だからか、道行く人はまばらで、歩く人は皆、家路へと急いでいるのか、明日の仕事の事でも考えてるのか、とても早歩きだ。
マスクと伊達眼鏡だけの簡単な俺達の変装を誰も気にしてないようだった。
すると、るい君が手を繋いできた。
「え?ちょっと!」
「大丈夫だよ…仲良し繋ぎだし〜僕ら、恋人じゃなくて、ただの友達だもんね?」
ちょっぴり意地悪く言われ、その事に言い返せない俺は
「そっか、ともだちだよね~」
って、子供みたいに、ブンブン振って歩いたのだった。
しばらく手繋ぎで歩いていると、真っ暗な中に、ポツンと灯りが…
大きなジェラートの模型が飾ってある。
目的地に着くと、パッと手を離した。
店内は、そこそこ人が居て、俺らがアイドルだってバレないかヒヤヒヤしたが、カップルが多く、互いの相手しか見ていなかったので、ホッとした。
俺は、ストロベリー味を頼み、るい君は、キウイフルーツ味…
店員さんが綺麗に盛ったジェラートは、どちらも、ゴロゴロ果肉たっぶりで、めちゃくちゃ美味そうだ。
「写真!撮らないとっ」
嬉しそうに、手元の2人分のジェラートを撮ると、また見せてくれた。
よく見たら…
これって、お互いのカラーじゃないかな…赤と緑…
狙ってたのかなぁ…でも、俺がストロベリーを選んだのは、何となくだし。
「行こう!歩きながら食べよ!少しあげるから」
って、るい君に再び手を繋がれ、お互いのジェラートを交互に食べる。
なんか、これも意識してしまうのは、俺だけかもしれないけど…
めっちゃデートっぽくて、恥ずかしい。
食べ終わると…
スマホをチョイチョイと操作してる…
「良し!投稿!」
俺は自分のスマホを取り出す。
フォローしてある、るい君のアカウントを開く。
『和食屋さんで、素敵な癒し時間…沢山の品々を前に、疲れが吹き飛んだ!その後、前から行ってみたかったジェラート屋さんへ!これも、フレッシュなフルーツが凄く美味しくて、最高だったよ!』
というキャプションと共に、先程の写真が2枚。
確かに…めっちゃ普通のプライベートにも見えるけど…一緒に、さり気に写ってるのが俺だと思うと、すごいドキドキした。
早速、ミナミ君と、とおる君からイイネが付いたから、俺も、イイネボタンを押したのだった…
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