小さいだけのあいつをなぜ怖がる?

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小さいだけのあいつをなぜ怖がる?

 カサ……!  午後7時、ゴロゴロしながらスマホを見ていた私の平穏は、一瞬で崩壊した。  部屋に響く小さな音。そしてササッとよぎる小さな影。人類の敵、ゴキブリのおでましだ! 「ぎゃああああああああ!」  こうなったらもうパニックだ。私は悲鳴をあげ、リビングに駆け込んだ。父と母、姉がアニメを見ながら大笑いしている。 「お母さーん! ゴキブリ出た!」  自分で退治できないヘタレな私は、お母さんにいつも片付けてもらっている。お父さんは慌てふためき、お姉ちゃんは私以上に騒ぐのが恒例。  でも今日だけは違った。 「あんた何言ってるの? ほっとけばいいじゃないの。最近の若い子は虫とか平気なんじゃないの?」  お母さんはアニメを見ながら呆れ顔。 「そうだぞ。最近はいろいろな虫さんがいるんだから、ギャーギャー騒ぐのはやめるんだ。結構可愛いぞ?」  お父さんもだ。そしてお姉ちゃんに至っては。 「つーかさ、ヒグマとかに困ってる人たちの気持ちも考えたら? ゴキブリぐらいで騒ぐとかどんだけ甘ったれてんだよ。昭和かよ」    え、何これ。みんな急にゴキブリを庇い始めた。何かそういう愛護運動でもあるのかな。  私は慌ててスマホを出し、ゴキブリで検索してみた。すると目を疑う検索結果が。 【ゴキブリ図鑑に激怒、困った母親の行動】 【ゴキブリ嫌いは老害!? Z世代にとってゴキブリは当たり前】    な、な、何これ! 急に世の中が変わってしまった! そして急に頭が痛くなって、私はソファに倒れ込んだ。 ******* 「起きなさい! 人にゴキブリ退治させといて寝てんじゃないわよ!」    あれ、お母さんの声だ。 「お父さんもお姉ちゃんも役に立たないんだから!」  プンプン怒る母。いつもの光景だ。一体あの世界はなんだったんだろう。  
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