願いが叶う、その瞬間。

【１】

「そっか、よかった。どこ行く？　行きたいとことか食べたいもんとかあるか？」

　遼くんの質問に、わたしは緊張しないようなお店がいいって返した。

　あんまり高級なとこは不安だったし、そもそも高校生が夜に行くには分不相応だと思う。ママがよくそういうこと言うんだ。

　実際大人の人が特別なデートとかで来たのに、わたしみたいな子どもがいたらなんかイヤかもしれないってくらいはわかる。

　別に騒いだりしなくても、雰囲気っていうのかな。

「カジュアルなイタリアンならいいか？　同僚に教えてもらったんだけど、堅苦しくない店だから」
「いいよ〜。イタリアン大好き！　パスタだけじゃなくて、他のお料理も出るんだよね？」
　パスタ専門店は友達ともよく行くけど、「イタリアンレストラン(トラットリア)」は近所にあるお店しか知らない。

　昼はパスタメインで気軽な感じなのに、夜はすごく落ち着いてる。たぶんお値段も全然違うからじゃないかな。パパとママと三人でたまに行ってたんだ。

「そうだよ。夜はコースが基本、ってもフレンチのフルコースみたいなのとは違うから。もちろん、同じイタリアンでも店の格とか種類で変わるけど、そこはホントにお前みたいな高校生でも全然浮かないと思うよ。近所のイタリアン(プリマヴェーラ)よりもっと気楽な感じ。……まあ、中高生だけで来るとこでもないけどな」

　二人ならどこでもいいから、遼くんおすすめのそのお店に決めた。