人見知り、喫茶店へ行く(リベンジ)

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人見知り、喫茶店へ行く(リベンジ)

 第9回の「人見知り、喫茶店へ行く」ではオープンしているのかわからず、店の前を何度も行ったり来たりしただけで結局入れなかった例の喫茶店……覚えていらっしゃるだろうか?  病院の帰り道、ふとまたあの喫茶店へ行ってみようと思い立った。相変わらず中は真っ暗で、しかし誰かがこちらを見ているような気がしてならない。  しかし前回と違ったのは、看板が吊り下げられていたことだ。前は逆さまの状態で入口の脇に立て掛けられていた。  これはやっているに違いない!  私はそう確信し、思い切って重い木製のドアを引いた。  店内は薄暗く、人の気配はなかった。年季の入った白い壁に、レンガの床。窓から差し込む薄明るい自然光が独特な雰囲気を演出している。赤いギンガムチェックのテーブルクロスが敷かれたテーブルが4〜5席あり、奥の方でテレビの音が微かに響いている。10年前に来た時は音楽が流れ、お客さんで賑わい、猫もいたのだが、今は喫茶店特有のコーヒーの香りもしない。外から見た時は絶対にお客さんがいる気配があったのだが、実際は誰もいなかった。私は存在しないものにずっと怯えていたのかと少し拍子抜けした。  とはいえ、お店の人すら見当たらないのは困った。おそらくこのまま窓際の席に腰掛けたところで誰にも気付かれないだろう。 「すみませーん……」  人見知り、声を出してみる。返事はない。聞こえてくるのはテレビの音だけだ。 「すみませーん」  もう少し大きな声を出してみる。しかし、誰も出てこない。もしかしたらやっていないのかもしれないと思い、帰ろうか迷った。だがせっかく勇気を出して中に入れたのだし……それに、テレビが点いているということは人がいるということで……  私は恐る恐る店の奥へと足を踏み入れた。  右手にカウンターとキッチンがあり、左手にテレビとソファーがあったのだが、そのソファーで一人のお婆さんが爆睡していた。エプロンをしていることからこの方がお店の方だと察した。  起こしたら悪いんじゃないかとも思ったが、万が一意識を失っていたらと思うと怖かったので、私は思い切って声を掛けてみることにした。 「すみません……!」  私が呼びかけると、お婆さんはハッとして瞬時に起き上がった。聞いてみると、調子が悪くて寝ていたらしい。「大丈夫ですか」と心配する私をお婆さんはにこやかに宥め、好きな席に座るよう促した。  10年前と同じ窓際の席に座る。当時はここでナポリタンを食べたが、今は飲み物だけ提供しているようだった。アイスクリームを切らしてしまったのでフロートは出せないということで、とりあえずアイスコーヒーを注文する。 5bdf6b9b-68c5-4614-b77b-96a0aef43b16    アイスティー来ちゃった!  こればっかりは私の聞き取りづらい声質のせいだ。割とよくあることなのでまあ……アイスティーも好きだし、それにかわいいレモンも付いていてアイスコーヒーよりもフォトジェニックではないか。  私はなるべく時間をかけてゆっくりアイスレモンティーを飲んだ。  入ってみて良かったと思った。もしまた機会があったら、その時はアイスコーヒーを飲もう。
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