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日記7日分 11/25〜12/01
【2024年11月25日 月曜日】
職場へ向かう朝のことである。いつものようにひとけの少ない薄暗い道を歩いていた。この道が職場への一番の近道である。6〜7件の家が建ち並ぶ小さな住宅地を抜け、坂道を登る。坂の上にはテニスコートがあり、その周辺は林になっている。坂の中腹にそのテニスコートへ続く道が伸びているのだが、なんとなしにちらとそちらの道に目を向けると、見慣れない者の姿があった。
鹿だ。しかも2頭。大きな牝鹿と、少し小柄な牝鹿がこちらを向いて姿勢よく佇んでいた。
親子か……?
びっくりはしたものの、思いの外冷静にそんなことを思いながら、私は動きを止め、2頭を見つめた。2頭も私を見つめた。何とも言えない空気が私達の間に流れていた。
このまま硬直していても仕方ないので、私はポケットからおもむろにスマホを取り出そうとした。すると2頭の鹿は一目散に林の中へと走っていき、そのまま姿を消した。その場にはスマホを取り出しただけの間抜けな私だけが取り残された。
あの鹿たちが何を思ってこんなところに出てきたのかはわからないが、イノシシでなくて本当に良かったと思う。イノシシは向かってくるので怖い。鹿だって恐ろしいことはわかっている。鹿の蹴りをまともに食らえば骨が砕けることは知っている。しかし、私はあの2頭と出会った瞬間を良い意味で忘れないだろう。まあ、お互いのため、できれば人里には降りてきてほしくはないのだが……
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