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【2024年11月28日 木曜日】
朝、いつものように道を歩いていると、ある家の脇に置かれたゴミ箱の横に1人のおじさんが立っていた。おじさんはゴミ箱の付近を掃除しているようで、腰を曲げて何やらゴソゴソやっていたのだが、何かを手に取ったかと思うと、ふいにそれを私の歩く道に向けて勢いよく放り投げた。
私はそれを避けることができなかった。投げられたそれは見事私の首に直撃し、そのまま地面にぽとりと落下した。
おじさんは一体何を投げたのか? 私の首に命中したものは何か?
視線は自然と地面に落下したそれに向けられた。
そこにあったのは大きな大きな緑色の……イナゴのような、カマキリのような……まじまじと見ることができなかったためそれが正確に何だったのか定かではないが、とにかく大きな虫の死骸だったのだ。
声も出せなかった。私は戦慄し、しかし歩みだけは止めなかった。それが虫であるとわかった時点で十分だった。それ以上のことは知りたくもない。
「え、当たった……?」
おじさんがこちらを見て呟いた。
「ダ、ダイジョウブデス」
私はそう言って歩き続けた。まったくもって大丈夫などではなかった。虫が投げつけられた個所を何度も何度もさすり、何も付着していないことを確かめた。
もうこんな思いは一生御免である。
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