3人が本棚に入れています
本棚に追加
【2024年11月29日 金曜日】
穏やかに晴れた気持ちのいい朝から始まり、夕方まで特に変わったことは何もなかった。昨日おじさんに詳細不明の昆虫を投げつけられた道を恐る恐る通ったが、あの後きちんとどこかへ捨てられたのか、それとも野鳥が持っていったのか、そこに気味の悪い昆虫の死骸はなかった。
ホッとしながら職場へ向かい、いつも通り「暇だなー」と思いながら作業をした。この日は特に暇だった。暇なのは嫌いではないが、たまに恐ろしく不安になる。この会社は本当に大丈夫なのだろうかと……
詳しい内容は伏せるが、夕方帰る直前に急いでとある作業をした。人を待たせていたのでかなり焦った。そして少しばかり作業が雑になってしまった。その時はそんなに気にしていなかったが、すべて終わってからミスをしたのではないかと酷く不安になった。
私の不安を反映したかのように、遠くでゴロゴロと雷が鳴り、暗雲が立ち込め始めた。ついさっきまで本当に穏やかに晴れ渡っていたのに。天気予報でも雷雨だなんて言っていなかったのに。
退勤し、外に出ると、ぽつりぽつりと雨が降り始めていた。雷の音はどんどん近くなり、雨粒も徐々に大きくなっていく。しかし折りたたみ傘をさす気にはなれなかった。もし雷が落ちてきたら……と考えると怖かったのだ。仕方なく濡れながら帰ることに。
空の西側はまだ晴れていて、オレンジ色の夕日が眩しかった。雲は東側から来ているのかぁと思いながらそちらに目を向けると、灰色の空に巨大な虹が掛かっているのが見えた。
雷が鳴り響き、雨脚が強くなる初冬の夕暮れ時に輝く虹はどこか場違いで不穏だったが、それが返って奇妙な魅力を放っていて、家に帰るまでの間、ずっと東の空を眺めていた。この時だけ、ミスをしたかもしれないなんて不安は、すっかり頭から抜け落ちていた。
最初のコメントを投稿しよう!