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夕暮れの散歩はどこまでも
夕暮れ時に散歩に出掛けるのが好きだ。疲れを感じずに、どこまでも行ける気がする。散歩自体昔から好きなのだが、特に初夏の夕暮れ。今日が5月22日だから、ちょうど今くらいの季節の夕暮れが望ましい。真夏の夕暮れもノスタルジックな雰囲気で好きだが、何より暑い。最近の夏は日が沈んでも異様に暑い。暑すぎる。だから初夏が良い。
月が出ていると尚良い。雲がピンク色に染まっていると尚良い。どんなに心が疲弊してボロボロでも、嫌なことがあったとしても、夕暮れ時の空の美しさだけは変わらない。
一番印象に残っているのは、数年前、新卒で入った職場に適応できず、毎日疲れ果てて自己嫌悪と無力感に押し潰されかけていた時のこと。明日が来るのが特別つらかったから、きっと日曜日の夕暮れだったのだろう。私は憂鬱な気分で海岸沿いをトボトボ歩いていた。太陽が水平線の向こうに沈み、雲がピンク色に染まり、薄暗くなった青空の色と混ざり合って芸術的な模様を作り出していた。
私はそれを見た時、一時の間だけだがボロボロの心が何か良いものでコーティングされたような感覚を味わった。心の底から綺麗だと思ったのだ。
憂鬱さから感覚が鈍り、何をしていても常に心には薄暗い影がかかっていた人間が、夕焼け空を見て少しだけ心が動いた。この日のことは死ぬまでずっと忘れないだろう。「お空が綺麗だから何なんだよ。そんなことで心が軽くなるならその程度の悩みだったんだろ」と言われてしまえばそれまでだが。
ともあれ、夕暮れ時の散歩はとても良いものだ。是非移り変わる空を見ながら歩いて欲しい。日に日に太っていく白い月を見ながら歩いて欲しい。それで何かが変わるなんてことはないが、もしこれらの美しさに気付いていないのなら、気づいた瞬間、きっと気分が良いはずだ。
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