高速道路を眺める

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高速道路を眺める

 高速道路を眺めるのが好きだ。清々しいほどのスピードで、時には亀のようなスピードで、車たちは目的地へと向かう。どこへ向かっているのか、どんな人間が乗っているのか、何一つわからない車を、私は時折無性に眺めたくなって、散歩がてら高速道路がよく見える場所まで出かけていく。なんとなく落ち着くのだが、自分でもよくわからない。こんなことの何が良いのか。でかい道路と走行音が好きなのかもしれない。おかしい。走行音は騒音なのではないか?    本当は高層マンションの大きな窓から高速道路を見下ろしつつ読書なり音楽鑑賞なりしたいのだが、私のような人間にそんな場所に住めるような大金などあるはずもないので、おそらく一生叶わぬ夢だ。なので頑張って想像してみるしかない。  早朝の空いた高速道路と朝焼け。雨の降る昼間の混雑した高速道路と湿った走行音。夕方のブルーアワーの中に浮かぶ街灯とテールランプの光。行き交う車たちを窓辺から猫と一緒に観察するのだ。コーヒーを淹れるのも良いだろう。猫は嫌がるかもしれないけど。部屋にはlofi的な音楽でも流しておこう。  こんなことを考えて良いのだろうか? 高速道路は見世物じゃない! 見下ろすなんて言語道断だ!  いつも急に我に返ってしまう。何かすごく愚かなことを考えているような気がしてくる。だけど一生叶わぬ夢なのだし……  書いていて恥ずかしくなってきた。それに、高速道路について考えていたら無性にサービスエリアのラーメンが食べたくなってきてしまった。話が逸れるので、この話はここで終わり。    
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