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海のキラキラ
西日に照らされてキラキラ輝く海を見ていると、子供のころのことを思い出す。海にはいくつもの思い出がたくさん詰まっている。海に面した田舎町に産まれた私は、よく遊び場に海を選んだ。学校の友達と野良猫を構いに行った海、ずっと栄えた町から来たはとこを連れて行った海、父と兄と海の家に宝探し(砂の中にカードが埋めてあり景品が貰える)をしに行った海。初めて買った一眼レフを持って一人で散歩に行った海。色々な海がある。
一番古い記憶は、母と兄と散歩に行った時の記憶である。いつもは立ち入れない、潮が引いた時だけに現れる砂浜を歩いたのを覚えている。そこには大きな流木が鎮座していて、私と兄はそこに座って休憩した。母は小さいバッグからヤクルトを二本取り出して、私と兄に渡した。その時の味を、なんとなく、本当に何となくだが未だに覚えているのだ。まあ、ヤクルトなんて大人になってからも飲んでいるのだから、どんな味かなんてわかるに決まっている……と思いたいところだか、なんとなく違う気がする。大きな流木に座ってキラキラ光る海を眺めながら飲んだあの日のヤクルトは、なんだか特別だったような気がする。思い出補正というやつだろうか。
あの頃はまだ3歳とか4歳とかそれくらいだったように思うが、よく覚えているものだ。いったい何がそんなに印象的だったのだろう。同じく幼少の頃に行った旅行の記憶は殆ど抜け落ちているというのに。
私は昔も今も海が大好きだ。近場の海にしょっちゅう行っているにもかかわらず、少し遠出した先の海にも行ってみたくなる。海の側にいながら海を見たいと思う。場所によってはちょっと汚いけど、行き交うコンテナ船が見られる東京湾、どこまでも広く眩しい太平洋、深い深い青色をした駿河湾。色々な海を見たい。同じ海岸はない。海に飽きることはない。そんなことを思いながら、最後に乗せる海の写真を一生懸命選ぶのだった。
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