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人見知り、喫茶店へ行く
ちょっとした用事を済ませに電車に乗って出かけた。これは帰りの電車の中で打ち込んでいる。
昨日投稿したコーヒーの回で、インスタントばかり飲んでいないで喫茶店にでも行ってみようかと書いたが、用事のある駅がちょうど喫茶店の多い場所だったので、いくつか目星をつけて行ってみることにした。
名前は伏せるが、行きたい喫茶店の候補のひとつには10年ほど前に母と行ったことがあった。そこでナポリタンを食べた記憶がある。今回は用事と用事の間に1時間半間が空いてしまうため、そこで時間を潰そうと考えたのだ。
人見知りで臆病な私はかなり緊張していた。一度行ったことがある店は大抵何とか入れるのだが、もう10年も前となるともはや初見のようなものだ。
大通りからわき道に入った所にある小さくて可愛らしい洋風の建物で、確か猫がいたはずだった。私は店の近くまで行くと、前を通り過ぎるフリをして中の様子を窺った。窓に近付いてまじまじと中を覗く勇気などない。もし中の人と目があってしまったら、覗いているところを通りすがりの誰かに見られてしまったら、恥ずかしいではないか。
しかし、中は真っ暗で何も見えない。入口前には店の名前が書かれたボードが逆さまになって置かれている。時刻は10時半。早すぎたのかと思い、Googleで検索してみる。すると営業時間は10時からとあり、営業中の文字が。でも、本当にやっているのか? 看板すら出ていないというのに……
私は店の前を二往復ほどしてみたが、得られる情報は真っ暗な店内と逆さまのボードだけだった。試しにドアを引いてみれば良かったと今になって思う。でもその勇気はなかった。
用事を済ませ、別の店で昼食も済ませてしまっても、まだその喫茶店のことは気にかかっていた。午前中はきっと準備中だったのかもしれないと思い、もう一度店の前まで行っては見たものの、案の定何の変化もなかった。そして相変わらずドアを引いてみる勇気も出ず……私はその場をあとにした。
しかしだ。時刻はまだ13時半。このまま帰るというのも気が引けた。食後のコーヒーを飲んで帰りたい。
そこで第二候補の喫茶店に行ってみることにした。そこは前述の喫茶店とは違い、雑居ビルの1階にある店だった。看板も出ており、店の中もある程度見える。それなのに……
入りづらい。どうしたって入りづらい。
ここはまだ一度も入ったことがない店だった。人見知りで臆病な私は知らない店に入るのが本当に苦手だ。席が空いていなかったらどうしよう。メニューが高かったらどうしよう。頼み方やシステムが独特で理解できなかったらどうしよう。常連だけで埋め尽くされていたらどうしよう。マスターが怖かったら……考えればキリがない。次から次へとネガティブな考えが浮かんできていけない。だからいつもネットで調べてから足を運ぶのだが……
この店は調べてもなんだか入りづらく、私は店の前をうろうろうろうろと歩きながら心の準備をしなければならなかった。完全に不審者である。
だが通りすがりのお爺さんが店に入っていくのを見て、私はお爺さんに続け!と言わんばかりの勢いでついに入店した。
店内は、カウンター以外満席だった。
よりによってカウンター! 人見知りがカウンター!
でも仕方がない。入ってしまったのだから。ここで引き返したらもう二度と入れない気がした。私はかなりぎこちない動きで(きっとそうに決まってる)カウンター席に座った。メニューらしきものはどこにもなく、店員の女性二人は電話に料理に忙しそうだ。気のせいだとは思うが、この時なんだかすごく奇妙な空気が流れるのを感じた。
えっ、これどうすりゃいいの?
プチパニックになりながらもスマホを見るフリをしてちょっと待っていると、端っこの二人掛けの席が空いた。そっちに座りたいなぁと思っていると、ちょうど電話を終えた女性が「空いたからどうぞ」とそこへ通してくれた。「すみません……」と言うよりなかった。
ちょっと待っているとお冷とメニュー表が渡された。
暑かったのでアイスコーヒーにしてしまおうかと思ったが、メニュー表にアイスコーヒーの文字はない。おそらく言えば出してくれたのだろうが、そんな器用さは持ち合わせていないので普通にブレンドコーヒーを注文した。
やっぱりインスタントより美味しい。たまに酸味が強すぎてうえっとなってしまうコーヒーもあるが、ここのコーヒーは爽やかで飲みやすいと感じた。
お会計を済ませ(伝票が渡されなかったのでそれも焦ったりした)店の外に出ると、何かを乗り越えたような気分だった。
昔は今よりもっと人見知りや羞恥心が強く、知らない店には一人で入ることができなかった。なんだか怖くて。知っている店でもできることなら一人で入りたくはなかったほどだ。その頃に比べたら今はだいぶ成長したのだろう。普通の人からしたらかなり滑稽に見えるかもしれないが……
また機会があれば、入れなかった方の喫茶店にも行ってみるつもりだ。
美味しかった☕
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