戦闘中

1/1
前へ
/6ページ
次へ

戦闘中

 ゲリラとの混戦中、投げ飛ばしたゾンビの影から、目の前に迫る、鈍い銀色。あっと思った頃には熱い感覚が片目を覆って、視界が狭まった。 「風仁さんっ!」  夜空の悲鳴のような声と、自分が起こしたものではない破壊音。どうにかしたんだろう。火事場の馬鹿力かもしれないが、筋は悪くない。馴染みの気配が駆け寄ってきた。 「大丈夫ですかっ!?」 「別にどうってこたねぇ」  瞼の上を斬られただけのようだ。おそらく眼球は傷付いてない。 「……ちょっとだけ、我慢して下さい」  小さな顔が近付いて、次の瞬間には、少し湿り気を帯びたざらついた感触が傷口を這った。痛い。瞼の上を、熱い舌が滑る。癖になりそうだと思ってしまったのは、久しぶりに血を流した所為だと思い込む事にした。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加