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「おはよ。」
翌朝、目を覚ますと郁哉の腕の中にいて、起きるのを待ってたみたいにあたしを見つめている。
「…おはよう。」
自分の部屋とは違う空間が視界に入り、昨夜郁哉の家に泊まったことを思い出す。
そして、この部屋で郁哉と何度も身体を重ねたことも。
「俺、また暴走しちゃったけど、身体平気?」
「…平気。」
「それならいいんだけど。」
暴走したのは多分、あたしも一緒。
ちょっと冷静になると、なんだか自分の言動が恥ずかしくなるくらいだ。
「今、何時?」
外はもう明るく、晴れているようでカーテンの隙間から日差しが差し込んでいる。
「今?今は…6時50分。」
郁哉は身体を捩らせ棚にあるデジタル時計を確認し、時刻を教えてくれる。
「もう7時近いんだ…。起きないと。あんまりゆっくりしてたらお母さん帰ってきちゃうね。」
郁哉のお母さんは、夜勤が終わると10時過ぎに帰宅すると聞いている。
まだその時間まで3時間以上あるけれど、時間というのはあっという間に過ぎてしまうものだ。
「そんな気遣わなくていいよ。母さんには元々樹理亜さんと出掛けるって言ってあったし、その流れで泊まるっていうのも分かってると思うし。うちに泊まることなったけど、それだって別に問題ないよ。」
「そうかもしれないけどでも…。」
「大丈夫だから、気にしないで。」
「う、ん…。」
郁哉はふっと笑って、あたしの頭を撫でながら抱き締める。
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