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「末永じゃん!久し振り。」
移動しようとした時、矢野さんがあたし達の姿を見付け、こちらに近付いて来る。
「矢野先生。お久し振りです。」
郁哉も矢野さんの姿を見て、嬉しそうに返事をする。
「消防学校行ってんだって?」
「はい。今帰ってきたところで。ちょっと寄ってみました。」
「そうか。」
自動車学校指導員と元生徒というだけの関係なのに、まるで親しい友人と話すみたいな雰囲気の2人。
矢野さんはもちろんだけど、郁哉もいい人当たりがいいからか、その距離感なんか全く違和感がない。
そこへ「矢野さん」と、すぐ近くにいた常盤くんが矢野さんに声を掛ける。
「俺、先にデスクに戻ってますね。」
「あぁ悪い。」
矢野さんの返事を聞いた常盤くんは、ちらりと郁哉に視線を移動させ、軽く頭を下げる。
郁哉も「どうも」と言って頭を下げると、常盤くんはそのままデスクへと戻って行った。
こうして郁哉と常盤くんが顔を合わせるのは二度目だけど、なんだかハラハラしてしまって見ていられない。
現に郁哉は何か物言いだけな様子で常盤くんの後ろ姿を見ていたから、尚更だった。
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