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4月⑭
定時で仕事を終え、いつも通りアパートに帰ると、あたしを郁哉が出迎えてくれた。
「樹理亜さんおかえり。お疲れ様。」
「…ただいま。」
「おかえり」って言葉だけでもキュンとするのに、「お疲れ様」なんて更に言われたら今日の疲れなんて全部忘れちゃう。
「お腹空いたでしょ。着替えて準備するから待ってて。」
部屋に上がってすぐクローゼット前に向かい、その扉を開けようとしたちょうどその時。
「…着替えなくていいよ。」
耳元でそう囁かれたのとほぼ同時に、背後から郁哉の腕に抱き竦められた。
「……っ、」
その行為と言葉で、たちまち全身に熱がまわる。
「樹理亜さんのその制服姿、久々に見たらじっとしてらんない。」
「…いく、や…、ちょっと…待って…、」
ぎゅっときつく抱き締められ、更に密着して耳元に郁哉の吐息がかかり、それだけで身体の奥がじんとしてくる。
「待てるわけないじゃん。制服で帰ってくるから悪いんだよ。」
「そんなこと、言ったって…、」
「常盤さんは毎日この制服姿間近で見てるなんて、許せないな。俺は久し振りに見たのに。」
そんな郁哉は髪を寄せ、あたしの首の後ろにチュッと音を立てながら口付けする。
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