4月⑭

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* 「外で晩飯食べようって言ったのに、なんかごめん。」 「いいよ全然。」 帰宅後外食に出掛ける予定が、予定外の行為であっという間に時間が経ってしまい、遅くなりそうだったから出掛けるのをやめてピザを頼んだ。 「こんな予定じゃなかったんだけど…。」 郁哉は深い溜め息を吐くばかりで、目の前のピザになかなか手を付けようとしない。 「気にしてないから大丈夫。それにあたし、久々にピザ食べたかったんだよね。」 「ホントに?」 「ホントに。」 これは郁哉を慰めるためではなく、本当の話。 宅配ピザなんて久しく食べることがなかったから、よくポストに入っているチラシを眺めては、食べたいと思っていたのだ。 だから、郁哉がそんなに気にする必要もないのだけれど。 「会う度にしてるし、今日に至っては予定外のことして、イヤにならない?」 「え、あたし気にしたこともないけど。」 特に今は週末しか会えないし、いつも郁哉があたしを求めてくれるのはすごく嬉しいんだけどな。 「このところ全然普通のデートっぽいことしてないからたまには出掛けたりした方がいいのかな…とか、思ったりもして…。」 「あー…言われてみればあまり出掛けたりしてないけど、でもあたしは郁哉と一緒にいられるなら拘らないよ?」 意外とそういうところに拘るのは、郁哉が真面目であたしのことを考えてくれてるからだと思う。
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