4月⑮

3/8
前へ
/159ページ
次へ
  「え、それって樹理亜は常盤くんの特別ってこと?」 「いつの間にそんな仲になったの!?」 美久の話に喰らい付いてきたのは、あたしの向かいに座っている莉子と美咲。 そして、斜めにいる朝香と真希も美久の話に反応して視線がこちらに向いた。 彼女らも高校時代、美久と同じく仲良くしていた友人だ。 「違う違う!そんなんじゃないってば。」 美久がおかしなこと言うから、すっかり鵜呑みにされてしまってあたしは慌てて否定した。 「あたしが思うにはさ、常盤くんは樹理亜に接近したくてこの飲み会企画したと思うのよ。」 けれど、美久はあたしの発言などまるで無視で自分の考えを語る。それに対して莉子と美咲は「なるほど」と頷く。 完全に話が変な方向に向かってしまった。 当の常盤くんはというと、少し離れた場所で特に親しい相澤くんや宮下くんと一緒に楽しげに話しながら飲んでいる。 「高校時代は全然そんな感じじゃなかったのにね。」 「ホント。なんでまた急に樹理亜狙いなの?」 斜めの席から朝香と真希も興味津々で話にはまってくる。 「それはあたしが聞きたいくらいだよ。」 あたしは別に常盤くんとどうこうなりたいとか思ってないし。 「えー、あたしが樹理亜なら、常盤くんに行っちゃうかなぁ。」 「あたしも。何気に優しいよね常盤くんって。ね、この際付き合っちゃえば?」 朝香と真希が勝手に盛り上がり、そこに莉子と美咲もにやにやしながら頷いている。 美久以外は今、あたしが元カレに振られた以降のことを知らないから、これは説明しなければと思った。
/159ページ

最初のコメントを投稿しよう!

63人が本棚に入れています
本棚に追加